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第4話 ”今度は長く雇ってもらえるかなぁ(※相手は震え上がっています)”

「ん?……お嬢ちゃん、ここに何しに来たんだい?」

「冒険者ギルドに紹介してもらって、働きに来ました!」


 やってきたのはすっごく煌びやかな、劇場みたいな場所。


 女神さまとの邂逅に、称号をいただくなんていう、夢みたいな出来事があったけれど、それはそれとして私の才能は未だに不明。称号と共にいただいた能力も不明。それに女神様も仰っていたしね。

 いつも通り、これまで通り、全力で毎日を頑張らなくちゃ。


「働き……え、いや。え、冒険者ギルド? ……ちょっと待ってろ」


 すごく怖そうなおじさん、奥に行っちゃった。偉い人の面接とかあるのかな。


 表は酒場で、呑んだくれてる男達がいっぱいいたから、うら若き乙女としては長居したくなかったんだよね~。

 それで、直接地下まで来ちゃった。バーテンのお爺さん、びっくりしたみたいに見てたし、中まで来ちゃったの、やっぱりまずかったかな。


「奥に来な」


 あ、怖そうなおじさん戻ってきた。すごく厚地のビロードみたいな生地でできたカーテンの裏に案内される私。

 綺麗なドレープが出てて、いいな~。こんな生地で紗雪のドレス創ってあげたいな。でも、サイズが小さいから、これだけ厚手の生地だとドール用にはドレープが出ないよね。それなら、肘掛け椅子の張り地とか、この生地で作ってあげる方が良いかな。

 見られてないよね……? 怖いおじさんが背中を向けてずんずん歩いていく後ろで、そ~っと。

 うん、やっぱり手触りも最高。これでケープとか作ったら、絶対可愛い。紗雪の抱っこタイムの幸せ度アップよ!


 奥で待ってたのは、さらに怖い見た目の、禿げ頭のおじさん。

 それに、武器を構えた男の人達。

 胸元に視線を感じて、ついつい、いつもの癖で睨みつけちゃった。


「なんて目で睨みやがる」 「おい、こいつやべぇぞ」 「親方……いざとなりゃぁ、親方だけでも」


 2人くらい腰を抜かして倒れてる。失礼だなぁ、こんな美少女に見つめられたくらいで。


「冒険者ギルドの依頼っつったな。まずお前はナニモンで、どんな依頼だ」


 一番偉そうな、豪奢な机に腰掛けているおじさんが問いかけてくる。

 これは、面接だね!? やっぱり、冒険者ギルドの紹介だけじゃ、すんなりと雇ってはもらえないか~。すごくお金のかかってそうな施設だものね。人柄とかちゃんと見るんだ、さすがだよね。


「ナオ、18歳。冒険者ランクは見習いで、荷物運びをさせてもらってるの。今は固定パーティーはないけれど……。それで、兼業で働けるところを冒険者ギルドで紹介してもらっているわ」

「紹介……紹介?」


 なんか、頭が痛そうに大きな掌で、つるりとランプの光を照り返す禿頭を抱えちゃった


「あーなんだ……。ギルドカード、見せてもらってもいいか」

「もちろん!」


 でも、私のなんて見習い用だから、見ても面白くないよ?


 はい。って、真っ黒な墨色に、縁に銀色の装飾が入ったカードを、プレゼントでもらった魔法のカバンから取り出して。渡してあげたの。

 それを見て、顔を引きつらせる男の人達。

 あ、横の貴方! 「ひっ……!」って、お顔ぴくぴく。ひっど~い。そんなドン引きする程、呆れるぅ?


 失礼な……ちゃんと見習いだって言ったじゃないのよ。

 やっぱり見習い用の黒なんて、恥ずかしいのかな。次はもっと可愛いピンクとかがいいな~。こんなお洒落っぽいデザインにするなら、可愛い系でもいいじゃない。そうよ、見習い女の子用はピンク! 今度お願いしてみよっと。


「親方……銀縁の、漆黒。特級……!? 俺様でもこいつぁ」


 案内してくれた怖そうなおじさんが、さっきは持っていなかったはずの、背中の大剣に手を添える。

 なんだろう、皆ぴりぴりしてる? よく見たら全員、男性。もしかして女性禁止の職場とか?

 鋭い眼光で、部屋の中の人達を睨む、偉そうなおじさん。


「お前ら待て、早まるんじゃねぇぞ。なあ、嬢ちゃん。いや、ナオちゃんや。指名依頼書……あー、紹介状も見せてもらえるか?」

「あ、よかった……雇ってもらえるのね? これよ!」


 仰々しい封蝋がされた羊皮紙、スクロールを取り出して、偉そうなおじさんに渡す。

 そっと、それを開いて、目を通したおじさんは、


「……わかった。じゃあ、こっちに来てくれ。働きに来てくれた、んだよな? どんなことでもする……んだよな?」

「ええ。どんなことでも頑張るわ! だから……お願い、働かせて頂戴。いろいろなことを経験したいの」


 綺麗に掃除がされているけれど、ちょっと暗すぎるわね。怪獣が通るのかしら? っていうくらい巨大な通路。

 厳重な錠前がかけられた扉を2つも通り抜けた先。この地下に入ってきた時の、煌びやかな劇場より一回り小さい程度の広い空間。


「うわぁ……綺麗」


 思わず目を輝かせる私。だってだって、すごいのよ! 

 西方大陸の様式がうかがえる、煌びやかな色とりどりのドレス、宝石をふんだんにあしらった装飾品。

 かと思えば、独特の風合いや柄が心をくすぐる、東方大陸の着物や旗袍(チーパオ)

 あっちにあるのは、南方大陸のガラスを使ったランプや、高級絨毯ね?

 あぁ、こんな素敵な品の数々、ドールサイズであったら紗雪のために買ってあげたい。私もお揃いで、使ってみたいなぁ。


「俺たちの商いってやつだ」

「まあ、素敵。貿易商ね!? 私、中央大陸から出たことが無いから、諸大陸の文化には興味があるの」

「お、おう。そうそう、そうだ、貿易商なんだよ。あとはよ、ほら、古物商とかもやってんだ。でな、今日は大事なオークションの日だからよ。新人はさすがに表に出してやれねぇ」

「当然ね」


 オークション。中央大陸と、諸大陸の間は気性の荒い海洋性の怪獣や、激しい海流の影響もあって、行き来が大きく制限されているの。だから、大陸間貿易はすごく大変。こんなお宝の山、すごい金額で取引されるのでしょうね。

 あぁ、冒険者ギルドは良い職場を斡旋してくれたわ。感謝しなくちゃ。


「でな、嬢ちゃんの仕事だが……お前さん、才能は?」

「ぅ……ごめんなさい」

「あ、あぁ、そうだよな、言えないよな。わかった」

「才能が分からない……の。だから、いろんな経験をして……」


 なんだかすごく複雑そうな表情になって私を見るおじさん。同情してくれてるのかな。別にいいのよ、「同情するなら才能の分かる、特別なお仕事ください!」 ってね


「あ、ああ、わかった。まあ、とびっきり変わった、生涯に一度きりな仕事をやるから安心しな」

「え、いけない、私また口に出てた? ごめんなさい」


 眉根を寄せるけれど、それ以上触れないでくれるおじさん。意外と優しいのね? でも男の人は嫌よ、ごめんなさい。


「で、だな。この奥にもう一つ部屋がある。そいつらの”世話”をしてくれ」

「お世話?」


 なにかしら、動物でも飼っているのかな。


「親方、そろそろ開場いたしやす」


 耳打ちしたさっきの怖いおじさんに、追うようにうなずいた偉そうなおじさん。


「これが鍵だ。今日は大事なオークションの日だからな。こっちには出てこないでくれよ?」

「わかりました。じゃあ、早速お仕事始めますね」


 私の腕くらいの大きさの大きな金属製の鍵。こんなのがはまるのは、あそこしかないね。

 広い空間の奥、外洋航行船を縛る鎖みたいな頑丈な鎖で封がされた、巨大な大扉……の、下にある勝手口みたいな普通の大きさの扉。船の舵輪みたいな輪っかが付いていて、その真ん中に鍵穴が見えてるの。


 しゃなりしゃなりと、そこまで歩いて。えい、ぶすりって。巨大な鍵を差し込んで、ぐるぐる~、舵輪を回す私。

 いつの間にか交易品がたくさん置かれたお部屋には誰もいなくなっちゃった。


 ギギギィー。


 重い軋み音を立てて、ゆっくりと開いていく勝手口の扉。


「って、ぶあつ!?」


 手前に開き始めた扉の厚さ、私の頭の大きさよりも分厚いよ?


 それにちょっと冷たい風が中から流れてきて、ひんやり。

 前に冥府ダンジョンの下の方について行ったときみたいな感じかなぁ。


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