第18話 ”もぞもぞ(深夜の可愛い侵入者)”
お家に帰ったら、玄関の前に女の子が倒れてた。
何を言っているかわからないと思うけれど、私も分からないの。
「どういう状況? これ」
「ナオの知り合い?」
「ううん」
「ナオ……様、わたくし……は、たとえ何人であっても、仲良く……一緒に、ナオ……様にお仕え、いたします。手始めに、ラティさんも……お呼びして」
「うん、ルナリス? ちょっと待とうか? なんかひどい誤解してるよね?」
蒼銀色の瞳から、光が失われている気がしてちょっと怖いからね? いや、本当に知らないし、私には2人しかいないからね?
え、ラティさんのことをいつも見てる? あれは、ふさふさの毛並みと、柔らかそうなお耳や尻尾をもふりたくて。
「胸にも視線が釘付けですよね」
ふにふにと、自分の胸を触りながら紗雪。うん、私と同じくらい大きいよね?
「胸……を、ご覧になって……いました」
やっぱり程よい大きさのお胸をさわさわしているルナリス。
「確かに、ラティさんのは私より大きい、すごい素質だけど! ち~が~う、から~。大切な、愛しているのは2人だけなの」
「ふふ。ナオをからかうのはこれくらいにして。この子、あの時の女の子ですよ」
けろっと、表情を素に戻して、倒れている女の子のフードをめくって見せる紗雪。見れば、確かに薄紫色の長い髪がはらりと、マントから零れ出てくる。
「んー。とりあえず、客室に寝かせてあげようか」
「そう……ですね~。熱もなさそう、というより冷たすぎるくらい冷たいので、逆に心配ですが。とりあえず息も正常。ひどい病気にも見えませんし、いったんベッドに寝かせてあげましょうか」
とりあえずマントを脱がせて、ベッドに寝かせてあげたのだけれど。あの時ちらっと見えた通り。細身の体に、薄紫色のロングヘアー、お耳が長くて、エルフの血を引いていそう。アメジストの瞳は閉じられたままで今は見えないけれど、薄紫色の長い睫毛が、密に生えていて、まさに眠れる美女。ならぬ美少女。
多分見た目の年齢は私達より4、5歳は小さいかな、14歳位?
私達というか、まあ、私。かな?
紗雪は制作からで言えば15年くらい。魂を込められてからはまだ1週間も経ってない。
ルナリスはルナリスで、私の意識が無かった間のラティさんとのお話で、深淵の古竜の空間は奴が言っていた通り、時間の流れが違っていた可能性が高いみたい。実際生贄として閉じ込められていた期間は不明。今の時代、というのかな、の常識が全然わからなかったって。だから、もしかすると数十年、数百年とかそういう単位で閉じ込められていたのかもしれない。
だから、見た目は皆、私くらいの年齢に見えるっていうだけね。
さすがに他人がいるのに一緒のベッドに皆で寝るのも、なんだか恥ずかしくて。その夜はそれぞれのお部屋で寝る事にしたの。2人がお家で過ごすようになってから、お部屋、一度も使ってなかったしね。飾りとか家具とか、欲しい物とか考えるのにもちょうどいいかなって。
そうして、2人と一晩の別れを惜しみあって、月明かりが丸窓から差し込む中、眠りについたのだけれど。
ぎぃ。
かすかな扉のきしむ音。
ルナリスが寂しくって、甘えに来ちゃったかな? それとも紗雪が、エッチないたずらをしに?
声をかけて戻っちゃったら残念だから、息をひそめて、寝たふり寝たふり。
この控えめな足音はルナリス? それとも一番軽い紗雪? どっちでも、来たらすぐに抱きしめて、首筋にちゅーって熱烈に、消えないキスマーク。つけちゃうんだから! 覚悟しなさい、私の可愛い子猫ちゃん♪
ふふふ~私は準備万端だよ! さあ、このお胸の中に飛び込んでおいで。
そろりそろり。ゆっくりと、めくられるお布団。
長い髪の毛が、さわさわ~って、足先から撫で上げてくる。くすぐったいのに、気持ちよくなってくる感覚。
イケナイ事をしている気分に。昂っているのか、少し荒い吐息が聞こえてくる。
内もものあたりを通り過ぎる湿り気を帯びた甘い息。
さわさわ~、細い指先が、太ももを撫で上げる。
ちょ、ちょちょ、ちょっと大胆!? え、え、この髪に、少し伸びた爪の感触は、えーーどっち!? わからないよ。あ、だめ、ダメよそんなところまでは。でも、指先がすごく冷たい? ルナリスもあの闇の中では心から凍え切っていただけで、今は触れ合うとほんわかあったか。冷え切っちゃったのかな……可哀そうに、温めてあげなくちゃ。
ついにお腹のあたりに差し掛かる、頭。
通過する間に、はだけてしまったネグリジェのお腹にちゅって、唇がかすめた感触。
もぞ、もぞ、ちょっとずつ細身の、私よりも小さな体が密着感を増しながら、布団の中。私の身体にフェザータッチしながら、あがってくる。
ひゃぁぁ、お、おかしくなっちゃう。だ、だめ。もう声かけないと。
私の頭の中は軽いパニック。この前一緒に寝た時は、あまあま、やわらかなお互いの身体をぎゅって抱きしめて、ちゅってした後眠りについたの。それだけなの。それなのに今は! ひゃぁ。両手が両脇から。
「ん、んうぅ。だ、だめだよ、それ以上はぁぁ」
もう限界!
やわやわ、さわさわ、って。どんどん敏感になる触り方に、視界が白く飛んじゃいそうになって、ぎゅーって。真夜中の甘~い、イケナイ侵入者を、抱きしめ捕まえる。
ずれたお布団。私のお胸にむにゅって顔をうずめていたのは……。
月明かりを吸い込むように、艶を増す薄紫の髪。月光よりも白い肌。
こうしてみても私達の誰よりも小さい、135cmくらいしかない身長の、耳が長い女の子。
「え、あ、起きたんだね? よかった?」
「姫しゃまぁ」
初めてきちんと聞いたこの子の声。ちょっと舌足らずな、甘え声。
「えぇぇ、また、姫? 本当なんなのもう」
ぐりぐり、って優しくお顔を私の胸に埋めながら、むにむにって、両脇から揉みしだく、小さな女の子。
嫌らしい気持ちは吹き飛んで、慈しむような穏やかで優しい気持ちがわいてくるばかり。
「寝ぼけて私のお布団に入ってきた? のかなぁ。少なくともこれ、寝ちゃってるよね」
乱れに乱れたネグリジェの、胸に感じる吐息はすごく穏やか。
「仕方がないか~。お休み、ね」
寒くないように布団を女の子の肩口まで掛けてあげて、優しく抱きしめて、眠りにつく事にしました。
素性の分からない子だけれど、穏やかな寝顔は可愛いし……最悪の最悪があっても、私ならまあ、ね。
――「ナオ……様……先を越されて……しまいました」
「え、普通にひくんだけれど、えー。手を出すなら、まず、私達にしてほしかったのに……」
戸口から覗き込んでいる二人。ものすごく悲しそうに落ち込むルナリスと、拗ねて見せながら、目には涙が浮かんでいる紗雪。
「いや、待って、これは誤解。誤解よ!」
「誤解……」
「うそよぉ」
自分の姿を見下ろす。
はだけてほとんど脱げかけの透け透けな黒いネグリジェ。うん。
身長差20cmはある、裸の可愛い可愛い女の子。うんうん。
抱き合う二人、足元の布団は乱れに乱れ、辛うじてお腹のあたりに引っかかっているだけ。これはあれね、この子がもぞもぞと侵入した時のまま。うん。
「私は無実! 潔白!」
「ぎるてぃー」 「……」
涙目からの、半目をダブルで食らいました。
「ほ、ほら。手。私の手を見て! フニフニ柔らかいお腹に……」
「私には、お胸を揉みしだいてるように見えるけど?」
「……」
あ、あぁぁ、ルナリスまでうるうるお目目で私のこと見てるー。違う、違うのよ。
でも、ひんやり冷たくて、ふにふに、気持ちいいな。
なんてやっていたら、もぞもぞ、起きだした女の子。
寝ぼけてポヤポヤしたお顔であたりを見回すことしばし。
はっと目を見開くや、急に無表情になり。ベッドから飛びのく、裸の美少女。
薄紫の髪が、晴天の空から差し込む陽射しにきらりと輝く。
その動きは、体格に見合わず極めて俊敏。
「ごぶれーを、おゆるし、くだしゃい」
舌足らずな声で片膝をついて畏まる美少女。
「えと、そんな畏まらなくていいから。ね? いろいろと聞きたいことが多いけれど、まず、お洋服……」
「この子のサイズのは、うちに無いですね。私のは、人形状態から変化時に形成した後も、マナを補給して着用していますから、脱いでしまうと、元の人形サイズに戻ってしまいます」
「わたくし……も、まだお着換えが少なく」
「うん、それにルナリスとでも10cmは身長差があるから。んー。元のお洋服はすごく汚れてたから、とりあえず、私のフリーサイズで着られそうなのを見繕うよ。それからご飯にしよう」
私とルナリスは”生命を宿す才能”のおかげでこの身体は、ほぼ飲食不要。紗雪は完全にそう。皆、好みで食べられるけれどね。
でもこの子には必要だから、ちゃんと用意しないと。




