第107話 七人の侍 vs 辻斬り @ 七辻
※カクヨム版のみ、一部の独逸語の単語を
独逸の旧字体「フラクトゥール」に変更(2022/03/01)。
【幽者】ユゲタイの幽と体を構成していた二人と、
かつて塾業界で「七人の侍」と呼ばれた、
七体の豚野郎共は、七辻にて邂逅した。
「テメェらを殺るためだけに、ゲーム脳共の空間に
ハッキングして待ち伏せしてやった甲斐があったぜぇ。」
「こっちも貴様らを斃すつもりだ。この黄昏の七辻で、
『七人の侍』を辻斬りといこうじゃないか。」
七人の侍 vs 辻斬り @ 七辻
といったところか。
「ハッハッハ。相変わらず元気が良いなぁ。
早速、粋がっている毒舌お坊ちゃまを
絶望させるための儀式を始めるぜぇ。」
連中は、ドラミングをしながら、歌い始めた。
「ちゃんと~儀式~」
「しな~いと~♪」
ドコドコドコドコ、ドコドコドコドコ。
「ジャガイ~モの♪」
「芽が生えて♪」
「く~るよ~♪」
ドコドコドコドコ、ドコドコドコドコ。
連中の肘の窪みから生えてくるジャガイモの芽みたいなヤツは、
宿主の豚人間族に寄生して、光合成を行い、
連中に漸次回復効果を付与するという、
厄介な生命体である。
「「「「「「【熱い棍棒】!!!!!!」」」」」」
更に、連中の首魁である、現在は豚鬼枢機卿と
名乗っている、元教室長を除く六体の豚野郎共の、
野球に使うバットみたいな武器が、桃色光線の魔力を帯びて、
【熱い棍棒】という、相手に焼き印を入れる技能が発動する。
だが、弓削青年も、既に、妖刀【クライオス】を構えていた。
こうして、七辻にて邂逅した、「七人の侍」と辻斬りの対決が始まった。
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「遅いな。」
様子を窺っていたが、豚野郎共の準備の遅さには呆れる。
戦場で敵が変身したり、長い呪文を詠唱しているのを
待っているとでも思うのか?様式美?知らないな、そんなもの。
「独逸流剣術・・・Mutieren Stechen!」
それでも一応、今から使う技名ぐらい宣言してやるとしようか。
技名は、独逸流剣術の「変化する刺突」である。
「eins!zwei!drei!vier!fünf!」
妖刀【クライオス】が、豚野郎共の肘の窪みから
生えてきた、ジャガイモの芽もどきを切り裂いていく。
「sechs!sieben!acht!neun!zehn!」
大学で第二外国語として、独逸語を選択する学生は多いだろう。
そして、独逸語選択者なら、10ぐらいまで数える程度は、
容易く暗唱することが可能であるに違いない。
だが、まだその先があるのだよ。
「elf!zwölf!dreizehn!vierzehn!」
15回攻撃だとか、16連撃だとかで粋がっている者が
いるらしいが・・・まだまだだね。この技は、それらの
遙か上を行く。何と・・・驚異の20連斬撃が可能なのだ。
「fünfzehn!sechzehn!siebzehn!」
全ての豚野郎共の肘の窪みから生えていた、
ジャガイモの芽もどきを切り裂き終えると、
今度は、その勢いを保ったまま、妖刀【クライオス】は、
豚野郎共の【熱い棍棒】を根底から叩き斬り始めるのであった。
「achtzehn!neunzehn!zwanzig!」
六体の豚野郎共の【熱い棍棒】を根底から
叩き斬り終えたが、弓削青年は、返り血一つ浴びていない。
「真の辻斬りとは、敵の返り血すら
浴びぬ程の速さで動けるものなのだ。」
驚愕する豚野郎共はドン引きだったが、
首魁である、豚鬼枢機卿は、
隠し持っていたバット杖を、桃色光線の魔力で覆う。
「【熱い棍棒】!」
そして、力任せに妖刀【クライオス】を叩き折った。
「相変わらずコソコソ動き回りやがって。面倒臭いやつだなぁ・・・。
取り敢えず死んどけ。これ以上、手間掛けさせんじゃねぇよ。」
「残念だな。今度は独逸語パートから、
アイヌ語パートに切り替えて、更に20連斬撃を加えて、
40連斬撃にしようと思っていたんだがな・・・。」
「テメェ一人で俺達『七人の侍』を相手に勝てるとでも
思ってんのか。ナメてんじゃねぇよ。」
「貴様には俺が一人に見えるのか?ククク。
もう一人の俺のこと、忘・れって・ない↑?」
宿主の病みエルフであるフサルクが、【祟りの凶杖】を
天に向けると、辺り一面に極低温の猛吹雪が
吹き荒れ、天空から†記号の形をした、
氷の劍が豚野郎共の影に降り注ぎ、
連中の動きを【影縫い】で止めてしまった。
「短剣符」とも呼ばれる†記号、
及び、‡記号は、主に脚注等に
使用される記号である。
何故か、中二病御用達の記号といわれている†記号だが、
量子力学では、共軛転置行列等を表す他、生物学では、
既に絶滅した生物を表し、言語学では死語を表す。
要するに、この世から喪われたものを表す記号である。
「チッ。時間稼ぎもここまでか。よ~し、野郎共。撤・退・だ~。
お前ら、【テッタイン】飲むぞ~!」
「「「「「「応!!!!!!」」」」」」
「また逃げるのか?この『負け豚』共がァ!」
「オウッ、オウッ。調子に乗ってられるのも今のうちだけだぜ。
もうすぐ北半球の極東全域を射程に、巨大な隕石が降ってくるように
【死兆星】の術式を組んでおいたからよ。結局、破滅する未来は、
回避できなかったってわけだ。絶望的な運命を受け入れなぁ!」
「何だと?!だが、そんなことをすれば、
貴様らだって、無事で済むわけが・・・。」
「俺らは、それを安全圏から見物させてもらうぜ~あ・ば・よ!」
そう言い終えたときには既に、全ての豚野郎は魔素の塵となって、
計算RPG【Primzahl】の世界から撤退していた。
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そして、数日後。
常井氏と土師青年は、計算RPG【Primzahl】
の迷宮の最奥の部屋に管理されていた、
反物質兵器を手に入れていた。
反物質兵器は、現実世界の地球にはまだ存在していない。
物質と反物質を衝突させた際に生じる莫大なエネルギーによって、
全てを無に帰す、核兵器すら遙かに凌駕する大量破壊兵器である。
日本では、未だに核兵器は原爆投下の印象のまま語られているが、
核分裂をその原理とする原子爆弾よりも、核融合をその原理とする
水素爆弾や中性子爆弾の威力は、桁が違うのだが、それでも
現代の人類の技術では、地球規模の隕石の衝突を回避するのは
難しいだろう。
核兵器を使用するとしたら、原爆投下みたいな直接的な殺戮による
報復合戦ではなく、敵国の人口順上位五指に入る都市の上空で
炸裂させて、電磁パルスを発生させ、停電など首都機能を
麻痺させ、国内の暴動などの混乱を誘発するのではないだろうか。
停電したら、電子マネーは使えない。
キャッシュレス化が進んだ国なら、現金は持ち歩いていまい。
停電したら、ATMも使えない。
仮に、一部のATMが使えたとしても、
個人主義が進んだ多民族国家の国民は、
日本人みたいに大人しく行列に並んで待つとは思えない。
必然的に暴動が起こるであろう。
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やがて、豚野郎共が召喚した巨大隕石【死兆星】が、
北半球の極東全域を射程にして迫ってきた。
さて、この隕石が落下した場合、荒脛巾皇国、
蝦夷共和国、玖球連合、といった国々は、
【術理の世界】の日本列島とともに崩壊し、消滅するだろう。
落下してくる隕石は、核兵器の威力をも遙かに凌駕する。
隕石の破壊力は、核兵器の比ではない。
譬え、隕石に対し、核兵器を使用したとしても、
その落下を防ぐことなど、不可能であろう。
とはいえ、確かに、核兵器を使用して、隕石を破壊するのは
難しいのは事実だが、この【術理の世界】には、あるのだよ。
核兵器を凌駕する超兵器、「反物質兵器」が。
そう、反物質兵器が存在するため、まだ隕石の迎撃は可能なのだ。
勿論、反物質兵器は、国家間の戦争では使用することを
禁じられているが、こうした隕石の衝突を回避するために
使用することは、合法となっている。
そして、恐らく、今頃、安全圏である地球の裏側にある
無人大陸で、豚野郎共は、この殺戮劇を
遠隔視して、嗤いながら、愉んでいるのだろう。
荒脛巾皇国、蝦夷共和国、
玖球連合の三国と、この【術理の世界】の
防衛機構とでも呼ぶべき、【無機知性体】は
共通の敵を前に連携して対処することになった。
次回更新は来月の予定。




