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【呪1000PV】異世界×蟲毒 転生したらびっくりするほどユートピア(邪神殿)でした  作者: 木倉 ゲイボルグ


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ゴブリン蟲毒

異世界蟲毒の時間です。まずは緑色の肌をした小鬼ゴブリンの群れを薄暗い穴の奥底に閉じ込めます。食料供給を断たれた彼らに残された選択肢は一つなんですよねえ。同族の肉を食らって腹を満たし。血をすすって喉を潤す。そうして最後の一匹になるまで熟成させた穴倉の蓋を開けましょう。


「あはははははははははははははははははははははははははははははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」


はあ。我ながら素晴らしくエリート的な発想でした。ゴブリンといえばファンタジー御用達の雑魚モンスターですが、昨今においては様々なバリエーションが生まれ、強化される存在です。そんなゴブリンを蟲毒したらいったい、どんな怪物が生まれるのだろうと期待しませんか? しますよねえ?


今、僕が見下ろしているそれは、もはや有象無象の雑蟲ではありません。地獄の穴から這い出た鬼は、同胞の血を全身に浴び、腐った臭いをまき散らしています。多少の愛らしさすら感じられたかつての面影は消え、ゴブリンでありながらゴブリンではない存在になり果ててしまいました。


素晴らしい。まるで何千年も戦い続けた戦士のような貫禄があります。髪は伸び、目は憎悪の炎に燃え、歯と爪は肉を裂くために鋭利に磨き上げられています。


「ゴブリン蟲毒の完成です!!!」


赤マント? 花子さん? 前世の怪異なんて目じゃありません。これからはファンタジー×蟲毒の時代って決まってるんですよねえ!


さてさて、せっかくなので名前をつけてあげましょう。ゴブリンキング? レッドゴブリン? うーん、どれも安直で二番煎じな響きがします。まあ、王道も悪くはないのですが、せっかくなので一手間加えてあげたいです。


「そうだ、武器を持たせてあげましょう」


僕は持ち手の短い手斧を差し出します。しかし、彼は首を傾げていました。


「こう使うんですよ」


つい先ほど殺しておいた木こりのおじいさんの首に手斧を振り下ろします。すると、彼は理解したのか嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねました。僕から手斧を受け取ると、重さを確かめるようにぶんぶん振り回しています。かわいいですね。


「そうだ! 君にこの真っ白な頭巾をかぶせてあげましょう!」


僕はそう言って、彼の頭に頭巾をかぶせます(ちなみにこの頭巾は教会のシスターからいただいたものです!)。彼は僕を主人だと認識しているのでしょう、一切の抵抗はありません。お利口ですねえ。


ところで、小鬼(ゴブリン)(オーガ)は邪悪な妖精――アンシーリー・コートに分類されるのだと聞いたことがあるんですよね。で、そのカテゴリの中でも面白い特徴を持った妖精がいるんです。その妖精は、斧をふるい、かぶった帽子を鮮血で染め続ける習性があるそうでして……その妖精の名を、彼にあげようではありませんか。


「さあ、蟲毒の王よ。君の名は『レッドキャップ』。この頭巾を赤く染め上げ、君という存在を世に知らしめてください。君が僕の呪いを叶えてくれることを祈っていますよ」


そうそう、大事なことを伝えなければ。


「この世すべての『善』を呪いなさい。それが君の、存在理由です」

「ソンザイ、リユウ」

「素晴らしい! 君はエリートになれる器ですよ!」


彼は、ただひたすら人間を呪い続ける悪鬼と化すことでしょう。


楽しみですねえ?





……。


今朝は妙な夢を見た気がします。が、思い出せないのできっと悪い夢ではないんでしょうね!


さてさて、怪人赤マント&青マントが消えてからというもの、我らが邪教神殿は平和そのものです。僕のドッペルゲンガーが姿を見せないのは、かえって不気味ではありますが。


トイレの花子さんがトイレに引きこもる割合が下がるというアイデンティティ喪失危機に陥ってはいますが、いたって良好と言えましょう。


そうそう。心なしか、花子さんの身長が伸びた気がします。怪異も成長するんですねえ。


僕がそのことを指摘すると、花子さんは「いい加減小学生も飽きてきたわ」と答えるではありませんか。確かに怪異として過ごした年月は小中高をはるかに超えるでしょうが、そんな理由で姿を変えていいものなのでしょうか。まあ、怪異なんて時代とともに姿形を変えるものですからよし!


「そういえばカケル、あんたはどんな力が使えるの?」

「え、急に何ですか?」

「アタシは刀を抜き差しすることでトイレの力が使えたけど、あんたはどうなのかなって」

「……トイレの力。洗浄力凄そうです」

「そこに引っかからなくていいわよ」

「あ、はい」

「で、どうなの」

「言われてみればと思ったのですが、それはきっと花子さんが怪異だからでしょう。僕はただの一般エリートなのでそんな特殊能力使えないと思います」

「……」

「どうしました?」

「一般エリート……?」

「そこ引っかからなくていいですよ」


と、白雪さんと一緒に蚕糸であやとりをしていたカナハ様が「今は使えるよ」とぼそり。それだけ言って、吊り橋から田んぼのフェーズに入りました。


「ちょちょカナハ様! 使えるってどういうことですか!」

「刀に聞いて。ボクは田んぼを耕すのに忙しいの」


カナハ様は田んぼとおっしゃいますが、すでに田んぼは消えていました。


「もう川じゃないですか!」

「川ができたから次は舟を作ろう白雪」

「あい」


……。


二人はあやとりに夢中にということですか。そうですか。


仕方ないので僕は花子さんの方を横目で見ました。すると花子さんが嫌そうな顔をします。


仕方ないので僕は花子さんの方をまっすぐ見ました。


「刀にでも聞いてみたら?」肩をすくめる花子さん。

「そうします」と言葉通りに受け取る僕。


「虚空よ虚空、君にはいったいどんな力が宿っているんですか?」

《……》

「花子さん。この子、無口です」

「そりゃそうでしょ。刀なんだから」

《赤イ刀ガ欲シイカ? 青イ刀ガ欲シイカ?》


……。


「花子さん」

「な、なによ」

「刀が喋りました」

「き、気のせいかも」

《赤イ刀ガ欲シイカ? 青イ刀ガ欲シイカ?》

「気のせいじゃないですよ」

「……そうみたいね」


僕と花子さんが言葉を失っていると、神殿徘徊から帰ってきた猫又さんが足元にすり寄ってきました。


僕がことの経緯を説明すると、「ふーん。えっどいにゃんねえ」と絶対に何も理解していない答えが返ってきます。


「そんなことより~、イイことしようにゃ~ん」

「風呂入って出直してください」

「そう言わずに~。あおーん」

「うわ、発情しないでくださいよ」


困るんですよね……猫又さんが発情するとカナハ様が発狂するんですもん。ほら、今振り返ってみたらお目目かっぴろげて首を微妙に傾けてこっちを見てます。今にも首が逆さまになりそうな勢いでカクカクしてて怖いです。それを間近で見ている白雪さんも違う意味でカクカクしていて、ああ、涙目になっているではありませんか。


と、【虚空】がカタカタと震え出しました。ちょっと脳が処理し切れてないんですが……!


《【選択の赤と青(デッドオアデッド)】――【青】》

「「「あ」」」


なんか発動しました。黒い鞘がみるみるうちに鮮やかな青に変色し、まるで刀が生まれ変わったかのようです。


「驚きましたよこの刀め……怪人が復活するかと思いました……」

「ちょっあんた!」

「なんです花子さん?」

「その格好……!」


え、なんでしょう。僕の一般エリート姿がどうしたというのでしょうか。


「やや!」


僕は理解しました。僕の体を覆う社会性保護結界(服)が、青マントに変わっていたのです!


……。


「僕が怪人青マントだった?」

「なんでそうなるのよ……」

「青頭巾?」

「知らないわよ……」


僕としたことが、混乱のあまり意味不明な帰結に至ってしまいました。


「これはつまり、妖刀【虚空】で切った怪異の力を取り込んだ……ということですかね」

「そうなんじゃない? 知らないけど」

「花子さん的にはおっけーなんですか……?」

「なにが」

「いや、自分の仇の力を持つ友だちってありなのかなと」

「あんたはあいつじゃないでしょ」


花子さん、心底興味なさそうですね。完全に吹っ切れた感じです。であれば、僕もこの刀を受け入れるとしましょうか。力に罪はなく、振るうものに罪があるのだと、そういうことにしておきましょう。





次回:電動マッサージ機(人力)

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