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【呪1000PV】異世界×蟲毒 転生したらびっくりするほどユートピア(邪神殿)でした  作者: 木倉 ゲイボルグ


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トイレの水で体を清めるアラフォー(400)

「ここにゃん♪」


猫又さんに案内されたのは、近くにあったトイレ。なんとまあ代り映えしない展開でしょうか。『トイレに百物語あり』とは聞きますが(初耳)、花子さんで十分です。


少々食傷気味な僕ですが、しかしながら、やはりといいますか、ビンゴでした。花子さんと赤マントのトイレから一番離れたこのトイレ、明らかに他の場所とは違う気配が漂っています。


10の個室があり、側溝じみたぼっとん便所がある。そこは他と変わりありません。


では何が違うのか。


日の出前の空が現れたかのように、一番隅の3番目の個室の天井が紫色に染まっています。なるほど、猫又さんはあれを僕に見せようとしていたんですね。


いつの間にか僕の肩を特等席にしている猫又さんに聞きます。


「猫又さん、あれって」

「あれなんにゃん?」

「え?」

「にゃん?」


思っていた反応と違います。これはいったい。


「猫又さんはあれを僕に見せようとしたのでは?」

「わっちはえっちする前に体洗いたかっただけにゃん」

「トイレの水で?」


僕は想像しました。洋式トイレの水を手桶ですくって体を洗い流し、色目を使って近づいてくるアラフォー(400)女性の姿を。


「ちょっと肩から降りてもらっていいですか?」

「にゃんで?」


同じ水で自分の尻の穴を洗っていたことを棚に上げつつ、僕は違和感を凝視しました。


この青に満たされた世界に現れた特異点が、僕にとって大きな意味を持つのではないかと思われてなりません。といいますか、これしか現状掴むべき藁が存在しないんですよ。


……いやいや、もう一つありました。


「猫又さん、お願い聞いたら案内してくれるって言ってましたけど、ここ以外に何かそれらしい場所があるんですか?」

「あるにゃん」

「どこです?」

「お願い聞いてくれないとにゃー」

「……本当にあるんですか?」

「……あるにゃん」


はい黒。この猫又、嘘つきです。人狼ゲームなら処刑ですね。


そうそう人狼ゲームってご存じです? 平和な村の中に人の皮を被った狼――人狼が夜ごと人間を喰らうので、村人は人狼を見つけ出して処刑する、というあれです。ゲームとしては村人陣営と人狼陣営に分かれて争うわけですが、色々な役職があって面白いんですよね。占い師、霊媒師、狩人、狂人などのオーソドックスなものから、サイコパスや妖狐なんてのもいるんです。


ちなみに猫又という役職もあったりして、僕が知っているものだと、猫又は人狼に殺害されることで道連れにするという大きな使命を背負っているんですよ。なんというか、切ないですね。


「お兄やん、にゃんでわっちを哀れな目で見る」

「いえ、可哀そうな生き物だなって思いまして」

「同情するならエッチなことしにゃい?」

「なんでそんなに淫乱になったんですか?」

「昔そういう場所で働いてたにゃん」

「猫も働く時代があったんですねえ」


仮にそういう場所で働いていたとして、淫乱であることとの因果関係が成立するのかは怪しいですが、この話は終わりにしましょう。


「猫又さん、申し訳ないですが、僕は行きます。あの妙に不気味な匂いが漂ってくる個室が僕を呼んでいる気がしてならないんですよ」

「確かにえっどい紫色にゃんねえ。わっちも一緒に入るにゃん」

「えっどい紫色とは」

「知りゃんの江戸紫。江戸を代表する(イキ)な色にゃん」


微妙に話が噛み合わないんですが、旅は道連れ世は情けと言いますし、魔よけとしてスケベ妖怪を連れ歩くのも悪くないかもしれません。


ということで僕は猫又さんと扉の向こう側を覗くことにしました。


こんこん、と一応ノック。しましたが特に返事はない。


「鍵は」

「かかってにゃい」


ということで遠慮なくドアを開くと、


「……ん?」


どういうことでしょう。トイレに背を向けていました。


そして目の前は紫色に染まっています。言うなれば紫の世界ということになります。


紫は最も高貴な色と見なされることもあり、冠位十二階では紫が最高位でしたし、紫微星(しびせい) という星は帝王の星と呼ばれているそうです。神に最も近い色、と考えてもいいかもしれませんね。とまあ霊性や神性に富んだ色であることに間違いないわけですが、今はそんなことどうでもいいんです。


紫がどんな色か? そんなの一つです。


紫は赤と青を混ぜた色つまり、この紫の世界は赤と青の世界のちょうど境界にある世界したがって、紫の世界――ということになりません?


そういうことにしましょう。いえ、そういうことでないと困ります。でないと赤い世界に行けないんですから。


僕は圧倒的希望的観測に身を委ねることとし、境界の境界を探すことに決めました。


振り返ると、後ろの3番目の個室から青いもやが漏れ出しています。きっと、このトイレの赤色バージョンが別の場所にある。そう思わせてくれる異様さがそこにはありました。


「お兄やん、早くここ出よ」

「猫又さん?」

「ここ、多分あかんよ」


猫又さんの語尾にゃんが消えてる……ということは、何かしら危険な気配があるということでしょう。





ただ、それが明らかになるのは、もう少し先のお話になるのでした――





次回:長かったわね! 花子よ!

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