第4話 最強ババア
※一部修整いたしました
「なんなんだ……」
誰かが呟いた。
黒々とした山肌が割れ、小さな白が。
黒いドレス。 長い白髪。
巨大な灰色オオカミの背に座り、少女が現れた。
「去りなさい」
こちらを見下ろす少女は、ろくに口も動かさない。
それなのに、小さな声が戦場の隅々まで届いたのは、なぜなのか。
風が止み、草木が呼吸すら止めたこの大地で。
沈黙を最初に破ったのは、誰かの悲鳴だった。
「な、なんだこれはっ!?」
突如、地面を突き破った巨大な根が、後方の将軍を絡め取る。軍旗ごと、遥か彼方へ投げ飛ばした。
「うわあああっ!」
「やめろ、やめろぉっ!」
灰色の旋風が、すぐ脇の一個小隊を呑み込んだ。
――兎だ。
大量の野兎が、竜巻みたいに戦場を駆け抜けていく。
さらに。
馬より巨大な灰狼たちが、雷を纏い駆けていく。
狙われるのは決まって、指揮官クラス。
一匹。 また一匹。
悲鳴と共に、戦場を吹き抜ける。
「や、ヤータンっ!」
気づけば、テスの声が遠ざかっていた。
地面が流れている。
いや。
大地そのものが、川みたいに蠢いていた。
「チュッ」
足元で鳴き声がした。
反射的に足を引けば、幾万ものネズミが津波みたいに走り抜けていく。
ただ蹂躙されていた。
動物。植物。動物。植物。
生きとし生けるものが全て、人類に牙を剥く。
――大地は、生き物で溢れていた。
気づけば、周りに誰もいない。
残るのは、残骸。遺骸。
削れ、裂け、ひび割れた大地。
再び訪れた静寂の中、私はその場にへたり込む。
ただぼんやりと――空を見上げていた。
お読みいただきありがとうございました。
敵国に、もはやろくな戦力は残っていないと聞いていたのに――意味も分からぬまま、たった一人に覆されました。
さて、誰もいなくなった戦場で、ヤータンの運命やいかに。
明日、午前6時台に更新予定です。




