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第11話 彼女の隣に立つ方法


 私は強くなった。


 術士として間違いなく、この大陸半島において、5本の指に数えられるほどに。


 しかし、ここで大きな問題が発生した。


「……どうすれば彼女の隣に立てるんだ?」




◆◆◆



「今日も会ったな。最強ババア!」


「……また、あんたかい。まったく、懲りないねえ」


「今日こそ、一本取らせてもらうぞ」


「はあ。できるもんなら、やってみな」


 気怠げに肩を竦めながらも、彼女の青い瞳は真っ直ぐ私を射抜いていた。


 互いの瞳に、戦場は映らない。


 映るのは、互いのみ。好敵手なのだ。


 最強ババアは、ひらりとドレス姿で飛び上がる。老婆とは思えぬ軽やかな身のこなし。突き出された細い指先から、青の光が迸る。

 渦を描きながら迫りくる光の奔流。

 私は逃げない。

 白手袋を脱ぎ捨てて、真正面から両手を突きだした。


(くっ……重い!)


 焼け付く掌。ほんのわずかでも集中を乱せば、私は消し炭になるだろう。

 それでも恐れはない。

 彼女のすべてを、受け止める。


「……流石ですね。では、次は私の番です」

 

 私の言葉に、彼女の薄い眉がピクリと跳ねた。

 その反応が、たまらなく心地よい。


 押し寄せる光の嵐を、私は少しずつ、少しずつ彼女の方へと押し返し――



◆◆◆




――ふむ。


 私はカップを皿へと戻した。

 広い屋敷の食堂。誰もいない空間に、「カチャリ」と軽い音だけが響く。


 精密な脳内シミュレーション。だが、どうにもしっくりこない。

 私はあごひげを撫でた。


 飲み干したカップの底を、じっと見つめる。


(悪くはない。しかし――それでは互いに傷つけ合うばかりではないか)


 私は彼女と、同じ方向を見据えたいのだ。


 だが、この国はちがう。


「最強ババアを滅ぼし、隣国へ攻め入ることしか考えていない」


 独り言が、空になったカップの中へ落ちていく。

 とぽとぽと二杯目の紅茶を注ぎ、砂糖を匙に半分ほど。


 彼女は、何を望むだろうか。

 どうすれば、喜んでくれるだろうか。


 くるくると、スプーンを回す。

 突き詰めて考えた私は――


「……くく、いいぞ。いい考えだ」


 テーブルに手をつき立ちあがる。

 勢いに、カップの中身がひっくり返るが、そんなことはどうでもいい。


 じわじわと、テーブルクロスに滲む紅。その広がりを眺めながら、私は一人、喉の奥で笑っていた。




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