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文烈様、三十四歳の妻を祖母にする責任は重うございますよ?

劉明珠でございます。


年が明けました。

今年、私は三十四になります。


まだ三十四です。

大事なことなので、二度申しました。


ところが玉珠は、朝から嬉しそうな顔でこちらへ来ます。


「姉上、今年はいよいよお婆様ですね」

「新年最初の挨拶がそれですか?」

「事実でしょう?」


反論できないのが腹立たしいですね。

考え込んだ玉珠の右手が鼻へ向かい、夫君につかまれました。


「お前は明珠殿を怒らせるな」

「まだ怒らせておりませんよ?」

「もう怒ってる」


よくお分かりですね。


文烈様――

あなたがいなくなって最初の年だというのに、どうやら私は悲しんでばかりもいられないようです。


……まずは玉珠を黙らせなくては。

年が明けました。

文烈様のいない、最初の年でございます。

だからといって、朝からしんみりしていられるかと申しますと、我が家の場合はそう簡単でもございません。

「姉上、今年はいよいよお婆様ですね」

玉珠が最初に申したのが、それでした。

「年が明けて最初に、姉へ言うことがそれですか?」

「ですが、今年なのでしょう?」

「そういう問題ではございません」

隣で玉珠の夫君が頭を抱えております。

「だから来る前に言っただろ。それを最初に言うなって」

「では、いつならよかったのです?」

「言わなくていいんだ」

難しい顔をした玉珠の右手が、考えるのに合わせて鼻へ向かいました。

当然、途中でつかまれます。

「まだ年が明けたばかりですよ」

「年は関係ない」

「では、いつならよいのでしょう?」

「一生やめろ」

夫君も大変ですね。

文烈様がおられたなら、横で笑っていたでしょう。

そう考えて、私はいつものように隣を見そうになりましたが、途中でやめました。

今年は、こういうことを何度繰り返すのでしょうね。

それにしても、年が変わった途端に「祖母になる年」と言われるとは思いませんでした。

私はまだ三十四なのですが。

……玉珠には通じないでしょうね。

春が近づく頃には、寧珠と肇の妻の身体にも、はっきりと変化が現れ始めました。

ほぼ同じ時期に子を宿しても、身体の変化まで揃うわけではないようです。

寧珠は朝になると、食べ物の匂いを嫌がることがございました。

昨日まで平気だった汁物へ顔をしかめたかと思えば、昼には急に腹が減ったと言い出します。

一方、肇の妻は吐き気こそそれほど強くないものの、とにかく眠そうでした。

話している途中でまぶたが重くなり、本人が「まだ眠くありません」と申した直後に欠伸をするものですから、説得力がございません。

「眠れる時に眠っておきなさい」

私がそう言うと、肇が真剣に頷きました。

「母上もそうでしたか?」

「寧珠の時は眠い日もございましたし、食べ物の匂いが嫌になったこともございました。環珠と和珠では、また少し違いましたよ」

「三人とも違ったのですか?」

肇の妻が尋ねます。

「同じ母から生まれるのですから、もう少し揃えていただきたかったですね」

彼女が笑いました。

子を宿したことのない人から見れば、腹が大きくなっていくだけに見えるのかもしれません。

実際には、昨日まで平気だったものを受けつけなくなったかと思えば、何もしていないのに身体が重くなる日もございます。

昼間は眠くて仕方がなかったのに、夜になるとなかなか眠れないことまでありました。

自分の身体なのに、自分だけのものではなくなっていく。

三度も経験したことなのに、二人を見ておりますと、忘れていたことまで次々と思い出します。

寧珠は子初殿の屋敷で暮らしておりますから、毎日顔を見るわけではありません。

それでも、こちらへ来るたび、腹の丸みが少しずつ増していきました。

本人より先に、その変化を口にしたのは和珠です。

「姉上、お腹出てきたね」

「そうね」

「いっぱい食べたから?」

寧珠が困ったように笑いました。

「違うわよ」

「赤ちゃんが大きくなったから?」

「そういうこと」

和珠は姉の腹をしばらく見つめ、それから私を振り返りました。

「母上も、私がお腹にいた時こうだったの?」

「もっと大きくなりましたよ」

「私、そんなに大きかった?」

「あなた一人だけなら、そこまでではございません」

「じゃあ何が入ってたの?」

「あなたです」

どうして話が戻るのでしょう。

環珠が横で笑っております。

もうこの子くらいになりますと、和珠が何を勘違いしたのか分かりますから、説明するより先に面白がるようになりました。

「和珠、母上のお腹には、お前のほかにご飯も入ってたんじゃない?」

「なるほど」

「納得しないでくださいませ」

娘二人に腹の中身を相談されるとは思いませんでした。

寧珠まで笑っております。

ただ、笑ったあとで腹へ手を当てました。

「どうしました?」

私が尋ねると、寧珠は首を振ります。

「何でもありません。少し引っ張られるような感じがしただけです」

子初殿が、ほとんど同時に振り向きました。

「痛むのか?」

「痛いというほどではありません」

「医者を――」

「呼ばなくて結構です」

私と寧珠の声が重なりました。

子初殿が黙ります。

「父上も、こうだったのですか?」

寧珠が笑いながら私を見ました。

「もっとひどかったですよ」

「もっと?」

「私が立てばどこへ行くのかと聞き、少し食が細くなれば医者を呼び、眠そうにすれば寝ろと言うくせに、長く眠れば今度は具合が悪いのではないかと心配する方でした」

子初殿が何とも言えない顔になりました。

お気持ちは分かります。

妻を心配しているだけなのに、死んだ義父と同じだと義母から観察されるのですから。

しかし事実なので仕方がございません。

「母上も、怖かったですか?」

寧珠が尋ねました。

「怖かったですよ」

ここは冗談にするところではございません。

「初めてでしたからね。何が普通なのかも分かりませんでしたし、腹の中を見ることもできません。それでも文烈様が私以上に心配しておりましたから、私まで一緒になって怖がるわけにもいかなかったのです」

「父上らしいですね」

「困った方でしょう?」

「母上、嬉しそうです」

余計なところまで見なくてよろしい。

やがて寧珠の腹がさらに丸くなると、立ったり座ったりする時にも、以前のようにはいかなくなりました。

腰を下ろす時には一度手をつき、ゆっくり身体を沈める。

落とした物を拾おうとしても腹が邪魔になり、結局、子初殿を呼ぶことも増えました。

それでも本人は、自分でできることまで取り上げられるのを嫌がります。

「子初様、私は病人ではありません」

「分かっている」

「では、なぜ庭へ出るだけでついてくるのです?」

「念のためだ」

聞き覚えがありますね。

一方、肇の妻は腹が目立ち始めても、比較的よく動きました。

ただし、以前より疲れるのが早くなったようで、午前中は元気に侍女へ指図していたのに、昼を過ぎれば椅子へ座って腰をさすっております。

「少し重くなってきました」

そう言いながら腹を撫でる顔は、困っているようでもあり、嬉しそうでもありました。

ある日、突然「あっ」と声を上げたことがございます。

肇が椅子を倒しかけました。

「どうした!」

「動いただけです」

「何が?」

妻が肇を見ます。

「あなたのお子です」

肇はしばらく固まり、それから恐る恐る妻の腹へ手を置きました。

「今、ここに?」

「もう少し待ってください」

二人で黙っております。

私まで一緒になって見守っていると、やがて妻が笑いました。

「今です」

肇の顔が変わります。

「……動いた」

「そうでしょう?」

もう一度来ないかと、いつまでも腹から手を離しません。

この子も、あなたによく似ておりますね、文烈様。

顔だけではなく、こういうところまで。

その日の夕方、肇は妻が庭へ出ようとすると、すぐ後ろについて歩き始めました。

あまりにも近いので、二人羽織でも始めるのかと思いました。

「肇」

「はい」

「なぜ、その距離なのです?」

「何かあった時に支えられるように」

「何もなくても邪魔になりそうですよ」

妻が小さく頷きました。

肇は見なかったことにしたようです。

すると環珠が、妙に真面目な顔で兄を見ました。

「兄上も父上に似てるなら、心配性も曹家の血なの?」

肇が黙ったので、私も少し考えました。

顔だけではなく、そこまで遺伝するのでしょうか。

横から玉珠が口を出します。

「では、寧珠のお子も心配性になるのでしょうか?」

「なぜあなたまで加わるのです?」

「曹家の血は強いのでしょう?」

またその話ですか。

考えながら玉珠の右手が上がり始めました。

夫君が見もせずにつかみます。

「まだ鼻には届いておりません」

「届く前に止めてるんだ」

「最近、早くなりましたね」

「誰のせいだと思ってる」

夫婦というものは、長く一緒におりますと、動きまで読めるようになるのですね。

私にも覚えがあります。

もっとも、私の場合はもう相手がおりませんけれど。

そう考えても、以前ほど胸の奥が大きく沈むことはありませんでした。

痛くないわけではございません。

ただ、痛いままでも人は茶を飲み、娘を気遣い、妹の鼻を止める夫を眺めて笑えるようです。

季節が進むにつれて、二人の身体はますます重そうになっていきました。

寧珠は寝返りを打つのも楽ではなくなったらしく、夜に何度も目を覚ますと申します。

子初殿はそのたびに自分まで起きるそうで、夫婦揃って少し眠そうな顔をしておりました。

肇の妻の方は、長く立っていると足だけでなく腰までつらくなるようで、それでも身体が固まるのを嫌い、侍女を連れて庭をゆっくり歩いておりました。

二人とも腹は大きくなりました。

けれど、同じではありません。

寧珠の腹ではよく子が動き、服の上からでも分かるほど強く押し返してくることがあります。

肇の妻の子は、普段は比較的おとなしいのに、夜になるとよく動くらしく、

「昼と夜を間違えているのでしょうか」

と本人が困ったように笑っておりました。

「生まれてから直していただきましょう」

「直りますか?」

「祈りましょう」

私にできる助言にも限界がございます。

やがて夏も過ぎ、二人とも外出を控えるようになりました。

私は産婆や侍女たちと相談し、いつ産気づいても慌てずに済むよう、必要な支度を改めて確認させました。

こういう役目を、自分がする日が来るとは思いませんでしたね。

昔は私が大きな腹を抱えて寝台へ座り、文烈様に落ち着けと言っていた側だったのに、今度は娘と息子の妻を迎える側です。

寧珠がこちらへ来たある日、私は隣へ座り、その腹へ手を当てました。

すぐには何もありません。

「眠っているのでしょうか」

「先ほどまで動いておりましたよ」

そう言った途端、中からぐっと押し返されました。

思ったより強くて、私は目を見開きます。

寧珠が笑いました。

「元気でしょう?」

「そうですね。祖母を蹴るとは、なかなか大胆な子です」

「まだ蹴ったとは決まっておりませんよ」

「では殴ったのでしょうか」

「もっと困ります」

二人で笑いました。

掌の下には、確かに子がおります。

もう「いるらしい」ではありません。

寧珠の身体を内側から押し、眠らせなかったり、腹を重くしたりしながら、生まれる日へ向かっているのです。

文烈様にも、触らせて差し上げたかったですね。

それだけ思って、口には出しませんでした。

この子が生まれれば、私は祖母になります。

肇の妻の子も、そう遠くないうちに続くでしょう。

そうなれば、孫が二人です。

三十四歳と祖母――

どうにも並びの悪い言葉ですね。

ついこの間まで文烈様の妻として娘たちの縁談を心配していたはずなのに、今度は孫が生まれるのを待っております。

人生というものは、もう少し途中でこちらの都合を確認してから進んでいただけないのでしょうか。

しかも玉珠には、すでに知られております。

今さら年齢を隠したところで無駄でしょう。

あの子なら満面の笑みで、

「姉上、三十四歳でお婆様ですね」

と申すに決まっております。

想像しただけで腹が立ちますね。

文烈様も笑っている場合ではございませんよ。

私が三十四歳で祖母になるということは、あなたが三十四歳の妻を祖母にしたということなのですから。

……責任の半分くらいは、そちらにもあるのでは?

そう考えると少しだけ気が晴れました。

もちろん、何の解決にもなっておりません。

その日の夕暮れ、寧珠は子初殿とともに自分の屋敷へ帰っていきました。

肇の妻は見送りに出ましたが、腹が重いのか、いつものように門までは行かず途中で足を止めます。

「寧珠様、お気をつけて」

「あなたこそ。もう近いのでしょう?」

「まだ少し先かと」

「では、次に会う時には、どちらかが母になっているかもしれませんね」

二人が笑い合いました。

その時は、私も一緒に笑っていたのです。

まさか、それから幾日も経たないうちに、あの言葉が現実になるとは思っておりませんでした。

夜半でした。

和珠を寝かせ、私も休もうとしていたところへ、廊下を急ぐ足音が響きました。

この屋敷で夜中に走ってくる者に、ろくな用事はございません。

戸が開き、侍女が息を切らして頭を下げます。

「奥方様、寧珠様が――」

私は立ち上がりました。

「どうしました?」

「先ほどから腹の痛みが続いているそうです。間も短くなってきたため、子初様のところから使いが参りました」

胸が大きく鳴りました。

「産婆は?」

「すでに向かっております」

とうとう来ましたか。

つい先日まで私の掌を腹の内側から押し返していた子が、今度は本当に外へ出てくるつもりなのでしょう。

「肇にも知らせてください。環珠と和珠は起こさなくて結構です。玉珠にも朝になってから――」

そこまで言ったところで、使いの者がもう一度頭を下げました。

「それから、奥方様」

「まだ何か?」

「寧珠様が、母上に来てほしいと」

言葉が止まりました。

寧珠が。

私を。

あの子が生まれた時、私はまだ何も分からない母親でした。

今、その娘が初めて子を産もうとして、私を呼んでおります。

文烈様……

あなたの孫が来ますよ。

そしてどうやら――

その前に、あなたの娘が、私を待っているようです。

劉玉珠でございます。


寧珠が産気づいたそうです。

つまり姉上が、いよいよお婆様になります。


「まだ生まれてない」

「ですが、もうすぐでしょう?」

「だから今は騒ぐな」


夫に止められました。

私は姉上を祝いに行こうと思っただけなのですが……


「三十四歳でお婆様になる瞬間ですから」

「それを本人の前で言うな」

「なぜです?」


考えながら右手を鼻へ向けると、いつものようにつかまれました。


「今夜くらい鼻もやめろ」

「鼻は関係ないでしょう?」


難しいですね。


ところで、生まれたお子が文烈様に似ていたら、姉上はどのような顔をするのでしょう?

ぜひ確かめなくては!!


「お前は朝まで家にいろ!」


まだ出かけるとも申していないのですが?

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