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義(フィラーファ)を求めて(Seeking the Khilafah, the story of Khadijah and Ahmad)  作者: Iassy Quassia Zaki
第三章 アンスロラス星系-トンベリュマニテ星系の謎
27/35

27 品種改良の館

 アガメムブーバルの旧支配領域を超えると、今度は少しばかり冷涼な針葉樹林帯と草原地帯が見えてきた。丘陵地帯の谷すじには川が流れている。ところどころに、家畜人類たちの集落が点在する。

 

 ラタノルライのシャトルは、ようやく父、テオンルライの待つ広大な森林草原領域へ到達した。


「こちら、ラタノルライ提督の搭乗機。まもなく最終アプローチ」

「空港、受け入れ態勢100%。進路確認、侵入を許可する」

 一般的な魔族たちのぞんざいな手続きとは違い、ここでは規則と手順が定められ守られている。

 シャトルは、静かによく手入れされた空港に着陸する。空港の横には、いくつかの研究棟と事務棟が見える。建物自体もその中も清潔に保たれ、よく整理されたところだった。独立調査官テオンルライは魔族の一般とは異なり、きれい好きであることが見て取れる。おそらく、その傾向が息子ラタノルライにも遺伝し、息子は軍人となったのだろう。

 ただ、出迎えたのは、テオンルイライ一人だけ。後方の建物を出入りするものはほとんどいない。テオンルライは自ら整理整頓に励み、一部を訓練した少数の家畜人類に任せている様子だった。


「ラタノルライ、待っていたよ」

「父上、遅れまして申し訳ありませんでした。持ち帰った遺伝子資源は、ご連絡申し上げたように若いオスとメスです。不思議なことに、彼らは16歳以前のまま成長が止まっています」

「ほう、おそらくそれは遺伝子レベルの操作と成長逆転の処理がなされているのであろう。成長しながら元に戻るという工程をずっと繰り返しているのだろうよ。まあ、俺には都合のいいことだ」

「というと?」

 ラタノルライは意外だ、という顔をする。テオンルライは、笑いながら答えた。


「オスとメスが両方とも手に入るというのは、とても都合がいいのだよ。メスは、成長度合いが生殖向きにちょうどいい年齢でとどまっているところに、卵子細胞は使わないままで億と新鮮さを失って使えなくなるから、すぐに活用せねばならない。他方、オスは、生殖細胞は長期にわたって利用できる。とすれば、現在の品種改良にはメスを活用し、将来の品質改良にはオスを活用するのが順当だ。そのために、オスは6歳ほど若返らせて、将来の品種改良に活用できるように、利用可能時期を遅らせるつもりだ。このずれによって長期間、確実に品種改良の結果を得られるのさ」

「なるほど」

「では、その二人を連れて来てくれないか」


 ラタノルライは、父テオンルライの依頼に従って、部下の海兵たちを使って、アフマドとハディージャを処置が行われる予定の研究棟へ連行する手はずを整える。

「海兵たち、では、あの二人を客室から連れて来てくれ」

「はい」

 白衣を着た海兵たちが、シャトルの中へ入り込んだ。


 まもなく、シャトルの中から悲鳴と怒号が響く。

「アフマド、アフマド!」

「ハディージャ! お前たち、ハディージャに何をするつもりだ!」

 暫く争う音が聞こえた後、シャトルから二人の姿が現れた。ハディージャは後ろ手にされ髪を振り乱す。アフマドは、後ろ手にされながらも、周囲の海兵たちを蹴り上げ、頭突きをくわえ、頑強に抵抗をつづけた。


「中で暴れられては困る。そこで二人に拘束手術着を着せろ」

 ラタノルライは、海兵たちを動員して、二人にそれぞれ拘束手術着を力づくで着せた。その後も力づくで別々の部屋へと連れていく。その間も、二人は互いの名を呼び合う。


「アフマド! アフマド!」

「ハディージャ、まっていろ! きっと助けてやる」

 やがて、二人は抵抗もむなしく、引き裂かれて、別々の部屋へ押し込められる。二人は、なおも互いの名前を呼び合いながら、ついにはそれぞれベッドに寝かされた。


 ラタノルライは、この様子を見て、少しばかり危惧する。二人は、今は力づくで推せつけられたが、先ほどのように互いの名前を呼び合う様子では、それぞれがいつ暴発するか、わかったものではなかった。


 父テオンルライの説明によれば、アフマドは、若返り処理をされるために準備に時間を要するという。その隣室では、ハディージャの準備を急がせることになった。すでに、ハディージャの枕元には、様々な機器が設置済みだった。

「このメスの身体には、やはりアンスロラスでの衝動器が埋め込まれたままになっている。これを利用しよう。薬品で衝動を強める必要はなさそうだ」

 

 ハディージャの衝動器を再起動すると、途端にハディージャはアフマドを求めて名前を呼び続けながら悶える。

「ああ、アフマド、アフマド! あなた! 早く来て!」 

「待っていろ、ハディージャ、必ず助けてやる!」

 アフマドはそういうと、猛然と暴れ出す。彼は室内の海兵たちを全て突き飛ばすと、部屋を飛び出し、ハディージャの部屋の前で暴れた。

 大人数の海兵たちは、何とかアフマドを抑え込む。彼の姿をみたハディージャは、彼に向けて両腕を差し出し、気を失った。他方、アフマドもまた同時に気を失った。

「アフマド…」

「ハディージャ…」


「やれやれ、やっと静かになったぜ」

 ラタノルライは、ため息をつく。父テオンルライのくみ上げた計画手順が果たしてうまくいくのか、そればかりが心配だった。



 ハディージャが目覚めたのは、一日経った朝だった。衝動器が再起動されたせいで、彼女は目覚めた途端に身体に起きる衝動に悶える。

「あ、また……もう、耐えられない。アフマド、アフマド!」


 ハディージャの様子を確認したラタノルライは、テオンルライに合図を送る。テオンルライは早速家畜人類の男を放り込んだ。

「さあ、悶えているんだろ。好きなだけ男たちを貪れるぜ」


 家畜人類たちは、飼いならされている故か、オスも大人しい者たちばかりだった。だが、ハディージャは警戒し、鋭く罵声を浴びせて、受け付けようとしない。

「いやよ、近づかないで!」


 別の男に入れ替え、また別の男に入れ替えても、ハディージャは強い抵抗を示した。テオンルライは困り果てた顔をする。他方、ラタノルライはやはり、という顔をした。

「父上、仕方ありません。あのメスには、力づくで家畜人類のオスたちを受け入れさせましょう」


 テオンルライは、息子から海兵の吸血鬼たちを借りると、家畜人類たちと一緒に入室させる。

「助けて......」

 ハディージャは恐怖のあまり、小さくつぶやいた。その途端、彼女の手にはどこからかシェイベットが飛来。ハディージャはシェイベットを握ると、室内中いっぱいに暴れはじめた。

「アフマド、どこなの? 助けて!」


 彼女は狭い部屋の中でシェイベッドをいろいろな所にたたきつける。最初は壁、次に椅子とベッド、様々な測定器。それらがことごとく打ちのめされて、金属くずと化した。果ては、室内にいた海兵の吸血鬼たちが次々に叩きのめされる。まもなく、全ての海兵たちや家畜人類の男たちは逃げ出した。

 ハディージャは、部屋に一人残された後も、アフマドの名前を呼びつつ暴れ続ける。

「もう、いや! 我慢できない! アフマド! どこなの?」


「これは、どうしようもないなあ」

 ラタノルライは、部屋の中で抵抗し続けるハディージャに手が付けられない。テオンルライは、ハディージャとアフマドの結びつきを強く記憶していることもあって、とりあえずの解決策を口にする。


「アフマドの名前を呼び続けているなあ。こうなると、アフマドを連れて来るしかあるまい」

「父上、アフマドは処置が終わったばかりで、眠ったままですよ」

 ラタノルライは仕方なく、海兵たちをして急いで隣室のアフマドを目覚めさせた。


 アフマドは、海兵たちによって無理やり起こされた。彼は、装いを整えるために鏡の前に立つ。すると、彼は、自分が10歳に戻っていることに驚いた。

「これが、僕? 小さくなったのか? いや、昔の僕に戻ったのか?」


 隣室では、ハディージャの叫び声が聞こえる。アフマドは、驚いている暇などないことに気付いた。

「あれ、ハディージャが泣いている。何とかしないと」


 アフマドは、テオンルライ、ラタノルライや海兵の吸血鬼たちが、ハディージャのの部屋を覗き込みながらも入ろうとしないことに気づく。

「彼女を怒らせて、手が付けられなくなったのか?」

「家畜人類の男たちを、彼女はどうしても受け入れない」

「テオンルライ、貴方は僕たち二人について、何を学んだんだよ?」

 そう言いつつ、アフマドはハディージャの部屋に入り込んだ。


 彼の目の前にいたのは、泣き叫んで暴れる大きな女の人。でも、彼女がシェイベットを握りしめていることで、すぐにハディージャであることに気づいた。

 他方、ハディージャにしてみれば、目の前に急に表れた10才の男の子の姿に驚く。しかし、よくみると、それは10歳の頃のアフマドと同じ姿。暴れていたハディージャは、小さなアフマドに気づくと、泣きながら抱き着いた。


 小さなアフマドは、抱き着くハディージャに圧倒され、顔が引きつる。

「やっと大人しくなったね、ハディージャ......」

「貴方、アフマドなのね?」

「どうして暴れたんだよ。ハディージャ」

「だって、アフマドがいないから......でも、貴方、子供にされちゃったのね。子供の時のあなたを覚えているから、すぐにわかったわ」

「僕だってことが分かってくれたのは良かった......でも、あ~あ、いたるところを壊しちゃって

......」

「だって、アフマドが連れていかれちゃって......わたし、一人にされて......そのあと、体の中で衝動が強まって、貴方がいなかったから耐えられなくて」

「それだからって、シェイベットをやたらめったら振り回すなんて」

「だって襲われたのよ」

「襲われた? 家畜人類の男たちなんだろ? 冷静に対処すれば、家畜人類の男なんか大人しいんだから、そのまま逃げ回っていればいいのに」


 アフマドはそういうと、ハディージャは黙り込んだ。アフマドは、周囲を観察し、彼に抱き着いているハディージャを見つめた。ハディージャが落ち着いたように見えたので、アフマドは一言付け加えた。

「そろそろ、離れてくれないかな......大の大人が何やっているんだよ」

「だって、寂しかったのよ」

「へえ、見かけは大人なのに、やっていることはガキだね」


 これは明らかによけいな一言だった。しかも、その声には、少しばかり馬鹿にしたようなニュアンス。それを敏感に感じ取ったハデイージャは眉間にしわを寄せる。

「どういう意味よ」

 アフマドは、しまったという顔をする。ハディージャは、小さなアフマドを締め上げた。

「痛いよ! そろそろ、抱き着くのはやめてくれない?」

 ハディージャは、子供らしい悲鳴に驚き、反射的にアフマドから手を放す。


 アフマドは、やっと自由になったところで、改めてハディージャを見上げる。ハディージャは、アフマドの視線を感じて我に返った。

「ねえ、子供にさせられちゃったの?」

「そうみたい。でも、今の僕は見かけは子供だけど、僕の頭の中は大人だぜ」


 見かけが子供なだけに、馬鹿にしたようなアフマドの声の出し方はハディージャの癇に障った。ハディージャはムキになって言い返す。

「へえ? でも、アフマドって、女の子の肝心なことを全然学んでいないから、やっぱり子供がちょうどいいわね」

「僕は、女の子のことなんか、全部わかっているさ。特に、寂しくなるとシェイベットをやたら目ったら振り回す、見かけは大人にみえる女の子のことはね」

「それって私のことを言っているつもり? そう、それなら、互いにテストしてみましょうよ…私のことをよく知っているんでしょ?」

「どういう意味だよ。ふうん......まあ、小さくなるといろいろな所が見えて来るよ」


 アフマドはそう言いながら、ハディージャの手術着がめくれあがっている部分を見つめた。アフマドの目の高さには、今まで普段注目したことのなかった腹の部分があった。


「ハディージャって、大人になりかけだったっけ? いや、まだ大人になり切れていないから、けっこうデベソなんだね」

「どういう意味よ!」

 ハディージャは思わず小さな子供を睨みつける。だが、子供の側は平然。


「そのままさ、デベソなのに大人みたいに威張っているなんておかしいな」

「あのねえ。今、貴方は子供なのよ。そんなこと言っていると、捕まえてお尻ぺんぺんだからね」

「へえ、そんなことできるのかよ。 あ!」

 小さなアフマドは、ハディージャの腕で抱えられてしまう。


「つかまえた! もう許さないからね。お仕置きします! お尻ぺんぺんだからね!」

 アフマドが暴れる。しかし、彼女は手を緩めずに、小さな男の子のお尻を叩き始めた。

「いた、痛い。ごめんなさい。許して!」

「へえ、素直じゃないの? 貴方は私だけの男の子。だからこそ、そうやって、初めから素直にお話すればいいのに」

「暴力女! 暴力反対!」

「ええ、それならなおさら許さないわよ!」

「ひええ」


 ハディージャは、小さいアフマドの顔を豊かな胸元に抱え直した。すると、アフマドは顔を真っ赤にして口をパクパクし始めた。

「ね、ねえ、ハディージャ。こ、これは拙い、拙いよ。柔らかいのが当たっている。だ、ダメだ....許して」

「だめよ」

「許してよ! ハディージャの柔らかいふくらみが当たると、変になる。心臓が、顔が....。10歳の時のハディージャでさえ、柔らかくて苦手だったのに......」


 アフマドが、追い詰められた鼠のように小さな声で、全面降伏の声を出す。その姿を見て、ハディージャは、昔、10歳だったころのアフマドがとても恥ずかしがり屋であったことを思い出した。そして、あの頃のアフマドがニールから何かを教えられて逃げ出した際に、ハディージャを見て真っ赤になりながら走り去った情景を思い出した。

 ハディージャは、はっとした。今のアフマドが女性を極端に神聖視し、恐れさえするのは、おそらく、その辺りの事情が絡んでいると思い当たった。そして、同時に、今の彼が憎まれ口を利いたとしても、彼に抱き着くと彼を黙らせることができることに気づいた。

「じゃあ、素直になりなさいね。じゃないと、もう一度ここの胸に抱きかかえるからね」

「わ、分かったよ」



 さて、ハディージャ達が静かになったのを見届けて、ラタノルライたちが一息つく。そこへ、海兵の一人が、息を切らして駆けつけた。

「アガメムブーバルが脱走しました。同時に多くのブーバル族や家畜人類を動員して、こちらに向かっているということです」

「何? だが、どうやって?」


 ラタノルライは、急いで父親テオンルライの元に戻った。

「父上、大変なことが......アガメムブーバルがアフマドとハディージャを狙ってこちらに向かっているそうです」

「こちらも、少々厄介な問題が生じてな」

「何かあったのですか」

「現在の研究が停止されなければならないかも。今回の措置が長期にわたることを上と相談したのだが……長期にわたる品質改良となると、皇帝陛下の御裁可が改めて必要になったらしいんだよ。もともと皇帝陛下は気の短いお方だから、すぐに結果をお求めになる傾向があるのだが……」


 ラタノルライは、テオンルライの困惑を見ながら、考え込む。彼は父に微笑みかけた。

「では、ちょうどいい機会です。アフマドとハディージャを皇帝陛下や皇太子の下に預け、父上の品種改良の意義を理解していただくのはいかがですか」

「ほほう、それは妙案だが……そうか、アガメムブーバルがこちらに向かっているからか......いいのか?」

「ええ、かまいません」

「そうか、それならばよい。俺の実験が多少遅れても、仕方ない」

「それでは、早速.」

「そうだな…..二人を収容し、皇太子宮にさっさと送りこんでしまおう」



 アガメムブーバル一味の襲来は、予想よりはるかに早かった。彼女は、支配下にあった家畜人類の女たちを軍隊のように訓練。彼女らは、アガメムブーバルの指示によって統率の取れた群れとなって攻め込んだ。

「女神様、こちらです」

「みんな、アフマドを探すのよ。それから、アフマドを従わせるには、あの女、ハディージャも必要だからね」

 アガメムブーバルは、自らも攻め込んだ施設や建物を探し回る。まもなく、彼女の部隊は空港と施設全体を占領した。他方、守備側の海兵の吸血鬼たちは、ラタノルライやテオンルライを守るので精いっぱいである。


「あら、これは同族のラタノルライ提督。海兵たちに守られながら、ぐずぐずしていたのね。おかげさまで、アフマドを手に入れられるわね」

「アガメムブーバル、場当たり的な種馬活動をまだ続けるのかよ。そんな無計画だから、ブーバル族はいつまでも底辺なんだぜ」

「そうなのかしら、でも、私は種馬のアフマドさえ手に入れれば、用はないわ」

「ほお、果たして、アフマドが見つかるかな」

「いいわ、すぐに見つけてあげる」


 アガメムブーバルたちは、施設や建物全てを破壊し尽くしたうえ、アフマドとハディージャのいる部屋を探し当てた。

「アフマドは見当たりません」

「ハディージャと思われる女を発見しました」

 アガメムブーバルは、知らせを聞き、ハディージャ達のいる部屋に向かう。


「あんたたち、誰よ」

 ハディージャは、小さなアフマドをかばうように立ち、大声で叫ぶ。そこに、アガメムブーバルが巨体をゆすりながら入ってきた。

「あら、ここにはハディージャしかいないのかしら。でもいいわ、アフマドは彼女が大切だから、必ず取戻しに来るでしょ。その際に彼も捕まえることができるわ」


「やめろ、ハディージャを放せ」

「何、この子供は? ずいぶん威勢がいいけど、やっぱり子供ね。大人の後ろに隠れながらでないと、大声を出せないのね」

  アガメムブーバルはそういうと、家畜人類たちに研究施設を破壊させた。その後は、子供の姿のアフマドには目もくれず、ハディージャを捕らえるように合図する。そして、同時に、ラタノルライのペットであるコリオレイヌスとダイアナをも連れ去った。


 暫くたつと、アフマドは、廃墟と化した施設からようやくテオンルライたちによって、引っ張り出された。

「なんだ、アフマド、お前、ハディージャを守れなかったようだな」

 テオンルライの嘲笑は、アフマドに無力感を感じさせる。アフマドは、悔しさを押し殺すように、低い声でつぶやく。

「僕を元に戻せ」

「それはだめだね。これから、俺たちはアガメムブーバルを捕まえて、ハディージャ達を取り戻す。そうしたら、お前も一緒に皇帝宮へ連れて行ってやるよ」

 テオンルライは、ラタノルライを近くに呼び寄せ、何かを相談する。そして、彼らは吸血鬼の海兵隊を引き連れて、アガメムブーバルの隠れ家へ向かった。



 ラタノルライは、海兵隊の調査によって、アガメムブーバルの隠れ家を探し当てた。アガメムブーバルの隠れ家は、彼女の支配領域の湖水沿いの岩山にあった。


「僕もつれて行ってよ」

 小さいアフマドは、ラタノルライに食らいついた。ラタノルライは、アフマドを完全に見下す。

「小さいお前が何の役に立つんだよ」

「アガメムブーバルは、僕が目的のはずなんだから、僕を連れて行かなくてどうするんだよ」

「この下等人類のガキ。言い方が偉そうで憎たらしいな」

「へえ、下等人類のガキも、満足に扱えないんだね。そちらこそ下等人類じゃないの?」

「なんだ、このクソガキは」

「クソガキ? 僕の頭の中は大人なんだぜ。へえ、ああ、そうか、大人と会話しているかどうか、判断もつかない低能者なんだな。本当に軍人なのかよ」

「このやろう」

「へえ、この程度で怒るのかよ。やっぱり、下等なブーバル族の出身だ。立派だよ」


 アフマドは徹底的に悪態と文句ばかりを言う。ラタノルライは、父テオンルライにとって大切な遺伝子源であるアフマドを傷つけるわけにもいかない。アフマドの悪態にじっと耐える。他方、アフマドはこのやり取りを通じて、悪態が人を動かすことを学んだ。

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