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【連載版】空気の読める聖女は今日でサービス終了です  作者: 秋色mai @ノラ令嬢発売中!


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25/29

25. 悪い顔


「怒ってくださって、嬉しかったです」

「当然だ」


 ライアン様を見上げます。ライアン様は嬉しそうにふっと笑って、抱きしめてくださいました。


「なっ……」


 握られたままの妖精を含み、妖精たちはみな敗北を知ったようです。ざまぁご覧になって何よりです。


「さぁ、手始めに、大聖堂を元通りにしてください。できなきゃこうですよ」


 手の中の妖精を見せつけました。


「脅すなんて」

「女神様はどうしてこんなのに力を」

「やっぱり最悪だわ」


 煩いと思いながらも、どうして力を……の部分には少し共感します。よくよく考えてみれば、私って清らかだとは程遠いというか、俗物的です。食べたいし、寝たいし、ライアン様が好きです。


「……勝手にこんなことをしたからでは?」


 ライアン様がポツリと呟きました。

 勝手に……。

 確かに、王都でも原初でも、女神様が慈悲深いお方であるという記述は一貫しています。


「自分のしもべたちの身勝手で孤児になった私を哀れに思ったと?」

「根拠はないが、俺はそう考えた」


 また口元に手を当てて考えているライアン様に頷きました。

 そう言われれば、そうとしか思えません。


「……自業自得はどっちなのでしょうね」


 俗物的とはいえ、私は敬虔に聖女として女神様を信仰し続けてきたのだから、嫌われる訳がありませんし。


「な、直せばいいんだろ、直せば!」

「ええ」


 妖精たちが一斉に飛んでいきました。行き止まりということもあり、一つの出口しかなく、風圧で髪がボサボサになります。それをライアン様が手櫛で整えてくださいました。


「ライアン様、私たちも行きましょう。

「ああ。……領民にも見えたら、驚いてそうだな」


 そう考えると行かせてしまって大丈夫だったのかと思いますが、逆に実体があれば対処できるでしょう。妖精たちが何かをするよりも、ヴェクサン家の皆様や騎士さんたちが切る方が早いはずです。


「何かしでかしてないか、監視する人が増えますね!」


 手の中の妖精が、なぜか少し濡れて、冷たくなった感じがしました。冷や汗でも掻いているのでしょうか。汚いです。

 元来た道の通りに、神殿を後にします。


「手が塞がっているんだ、足元に気をつけて」

「ありがとうございます」


 ここに来る前、もし聖女じゃなかったら、私なんて、とほんの少しだけよぎったこともありましたが、やはり杞憂に終わりました。ライアン様の態度は変わりません。

 山を下りつつ、手の中の存在が気になりました。


「そういえば、お名前は?」

「はぁ? 名前なんてあるわけないだろ」


 妖精同士は呼び合わないのでしょうか。


「じゃあアンドレで」


 この後たくさんの妖精を相手にすることを考えると、個別に呼べた方がいいと思いました。適当ですが、ないよりはマシでしょう。


「そんな急に名前なんか」

「アンドレさん、お返事は?」


 もうめんどくさいので無理矢理にでも認めさせようとすれば、妖精が鼻で笑います。


「はいって言うとでも……あっ」


 やさぐれた様子だった妖精の顔色が、どんどん悪くなっていきます。

 どうしたのかと状況を理解できないうちに、小指と妖精を結ぶ光の糸が現れました。


「っやっちゃったやっちゃったやっちゃった!!!」

「えっ、何??」


 それは弾けて、跡形もなく消えます。でも、つながっている感覚は残っていて……。


「契約されちゃった……」


 妖精が絶望したようにぐったりと脱力しています。


「契約って?」

「名前を受け入れちゃったから、あんたに従わなきゃいけなくなったんだ」


 ……なんと言うことでしょう。

 それは、すごく、都合が良い。


「でも、女神様のしもべなのでは」

「それは妖精全体であって、個別じゃないって……あ、また余計なことを!」


 正直、脅すだけでは危うい気がしていましたが、他の妖精もおんなじように契約をすれば……。

 悪い顔になっていたのでしょうか、ライアン様が興味深そうにこちらを見ています。


「そんな顔もできたんだな」

「ダメですか?」

「いいや、愛おしい」


 相変わらず、ライアン様はなんだか少しズレています。妖精は「ケッ」と鳴きました。

 もう随分と降りてきて、開けた場所で領地がも渡せます。


「聖堂も直っているようだな」


 ちゃんと約束を果たしたようです。と、言うことは。


「ライアン様、あれってやり直しが必要ですか?」

「ふむ……」


 正直、妖精の祝福なんていらないと思うのですが。

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断罪がありがたかった

― 新着の感想 ―
つまり女神様にとって、忖度という名の余計なお世話だったと…
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