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第99話 氏康の夜
小田原。
夜。
火が静かに揺れている。
北条氏康は報を閉じた。
越後。
また越後。
橋。
堤。
倉。
荷。
戦ではない。
だが。
嫌な報ばかりだった。
家臣が言う。
「魔王とは思えませぬな」
氏康は少しだけ笑った。
「だから厄介だ」
刀を振るう者は分かりやすい。
兵糧を絶つ。
囲む。
折る。
だが。
暮らしを積む者は。
民が守る。
兵が離れぬ。
崩れにくい。
氏康は窓を見る。
夜風が冷たい。
「急ぐな」
ぽつり。
誰へともなく言う。
まだ早い。
火が育つ前に消えることもある。
だが。
育てば。
山火事になる。
氏康の視線は、静かに北を見ていた。
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