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第98話 静かな命令
越後。
橋場。
木槌の音が響く。
湿った木。
泥。
疲れた息。
兼継は立っていた。
眠れていない目。
冷えた指。
だが。
声は揺れない。
「杭を替えろ」
短い。
「そこは流れる」
男たちが動く。
誰も疑わぬ。
最近。
皆が知り始めていた。
兼継は。
怒鳴らない。
威張らない。
だが。
間違えない。
少なくとも。
皆はそう思っていた。
若い兵が息を吐く。
「なんで分かるんだ」
老人が縄を引きながら言う。
「見てるからだ」
短い言葉。
兼継は泥へ入る。
足袋は汚れる。
袖も濡れる。
それでも。
先に立つ。
だから。
誰も止まれない。
橋は。
少しずつ形を持ち始めていた。
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