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第95話 氏康の視線
小田原。
夜。
火が静かに揺れる。
北条氏康は報を見ていた。
道。
橋。
荷。
病。
村。
積まれた紙。
戦の報ではない。
暮らしの報だった。
家臣が言う。
「いずれ崩れましょう」
沈黙。
氏康はすぐ答えなかった。
外では風。
灯が少し揺れる。
「……どうかな」
短い声。
戦は壊す。
だが。
国を積む者は。
壊れにくい。
時間が味方になる。
民が味方になる。
腹が味方になる。
氏康は静かに地図を見る。
越後。
寒い。
遠い。
貧しい。
それでも。
小さな火が消えない。
嫌な相手だった。
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