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第91話 濡れた足袋
夜。
越後。
兼継は戻っていた。
濡れた足袋。
泥の残る裾。
囲炉裏の火が小さく揺れる。
家臣が文を置いた。
病。
不足。
崩れた道。
少し良くなった村。
紙の束。
終わらない。
兼継は静かに座る。
肩が少し重い。
目も疲れていた。
それでも。
文を開く。
“橋、半ば”
短い字。
墨が滲んでいる。
寒い中、急いで書いたのだろう。
兼継は小さく息を吐く。
戦なら。
勝てば終わる。
だが。
国は終わらぬ。
明日も寒い。
明日も腹は減る。
だから。
止まれぬ。
囲炉裏の火が、ぱちりと鳴った。
兼継はまた筆を持った。
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