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第87話 春の荷
山村。
子どもが走る。
「来た!」
荷馬だった。
村人たちが外へ出る。
布。
塩。
薬草。
少しだけの米。
多くはない。
足りてもいない。
それでも。
去年よりある。
女が小さく息を吐く。
老人が荷を撫でる。
「届いたか」
短い言葉。
若い男が言う。
「最近、前より来る」
誰かが笑った。
「死ねって言われてねえらしい」
小さな笑い。
だが。
少しだけ肩の力が抜けた。
子どもが塩袋を見つめる。
女が味噌を煮る。
湯気が上がる。
生き延びる。
それは。
派手ではない。
だが。
国というものは。
たぶん。
こういう小さな積み重ねで出来ていた。
遠く。
山の向こう。
まだ見ぬ城の誰かが。
今日も帳面を見ているのかもしれなかった。
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