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第86話 小田原の沈黙
小田原。
北条氏康は地図を見ていた。
越後。
遠い。
寒い。
痩せた土地。
本来なら。
大国にはなりにくい。
だが。
報が積まれる。
道。
橋。
倉。
堤。
「……面倒だな」
静かな声。
家臣が顔を上げた。
「軍を出しますか」
氏康は首を横に振る。
早い。
まだ早い。
相手は戦をしていない。
国を積んでいる。
崩れるかもしれぬ。
だが。
積み切れば厄介になる。
窓の外。
風が鳴る。
氏康は指先で地図をなぞった。
越後。
まだ小さい。
だが。
静かな火ほど消えにくい。
そんな嫌な感覚があった。
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