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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第84話 濡れた街道

春。


越後。


雨上がり。


街道には、まだ水が残っていた。


ぬかるんだ土。


車輪の跡。


踏み固められた泥。


荷馬が、小さく鼻を鳴らす。


「前より早えな」


商人が呟いた。


荷を担ぐ男が頷く。


「去年は車輪ごと沈んだ」


短い笑い。


道は、まだ良いとは言えない。


それでも。


少しだけ進める。


少しだけ届く。


その“少し”が。


人を生かす。


先では。


農民たちが石を並べていた。


兵もいる。


誰かが命じたのだろう。


誰かが先を見た。


商人は荷を見た。


塩。


干し魚。


布。


届けば、生きる。


遅れれば、削れる。


遠い城。


遠い武将。


だが。


街道は嘘をつかない。


変われば、足が知る。


濡れた土を踏みながら。


男たちは、少しだけ足を速めた。


(次話へ)


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