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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第83話 春の味噌汁

春。


小さな村。


雪はようやく薄くなり始めていた。


囲炉裏の火。


味噌汁の湯気。


木椀から、薄い香りが立つ。


老人が静かに息を吐いた。


「今年は、生き残れたな」


去年は厳しかった。


寒さ。


飢え。


病。


夜が長かった。


だが。


今年は違う。


道が少し良くなった。


荷が届いた。


塩も。


薬も。


遅れながら、届いた。


若者が椀を持つ。


「兼継様のおかげか」


老人は少し考えた。


荒れた手を火へ向ける。


そして。


首を横に振った。


「皆で越えた」


短い言葉。


誰も否定しない。


運んだ者。


守った者。


待った者。


皆いた。


それでも。


遠い城で。


少し先を見ていた誰かがいたことも。


村人たちは何となく知っていた。


外では。


雪解けの雫が落ちる。


春が、静かに来ていた。


(次話へ)


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