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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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82/288

第82話 川辺の土

越後。


川。


雪解け水が、濁って流れる。


「堤が危ねえ!」


村人の声。


兵が走る。


縄。


石。


木材。


泥に足を取られながら、人が動く。


その中央。


兼継はいた。


裾は泥だらけ。


手も冷えている。


「石を右へ」


短い声。


「杭を深く打て」


兵が動く。


誰も迷わない。


怒号はない。


だが。


空気が張っていた。


兼継が歩くたび。


皆の動きが少し速くなる。


怖いからではない。


止まれば。


村が流れる。


知っているからだ。


老人が石を運ぶ。


若者が支える。


女たちが縄を編む。


川は恐ろしい。


国もまた。


放れば壊れる。


だから。


少しずつ守る。


兼継は濁流を見た。


冷たい風が頬を打つ。


「……まだ崩すな」


小さな声。


それだけで。


また、人が動いた。


(次話へ)


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