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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第81話 茶屋の噂

関東。


街道沿いの茶屋。


囲炉裏の火が静かに鳴る。


濡れた草履。


旅人たちの疲れた背。


湯気の立つ茶。


「聞いたか」


商人風の男が声を落とした。


「越後の魔王」


数人が顔を上げる。


「また戦か?」


「いや」


男は笑う。


「橋だ」


沈黙。


「……橋?」


「道も作ってるらしい」


誰かが吹き出した。


「魔王が土木か」


笑いが起こる。


だが。


話は終わらない。


皆、少しだけ耳を傾けていた。


戦国では。


強い国は多い。


だが。


住める国は少ない。


飢えぬ国。


逃げぬ民。


残る兵。


それは静かに強い。


遠い越後。


噂の形が、少しずつ変わり始めていた。


その頃。


小田原。


北条氏康は報を見ていた。


「橋」


一枚。


「倉」


もう一枚。


「……厄介だな」


戦だけの相手ではない。


氏康は静かに目を細めた。


(次話へ)


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