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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第70話「海」

越後の海は、荒かった。


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波。


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風。


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冷たい空気。


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「最近、船増えたな」


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漁師が、空を見る。


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商船。


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塩。


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布。


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米。


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海もまた、道だった。


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「上杉が港を整え始めたらしい」


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別の男が、笑う。


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「戦だけじゃねえんだな」


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その頃。


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兼継は、港を見ていた。


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海。


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広い。


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越後は、山だけではない。


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海も使える。


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「塩は」


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「安定してきております」


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家臣が、頭を下げる。


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兼継は、静かに頷く。


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塩。


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米。


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鉄。


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全部。


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戦より先に必要。


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「……戦国は面倒だな」


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ぽつりと呟く。


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戦だけなら、簡単だった。


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だが。


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国は違う。


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守るものが、多すぎる。


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遠く。


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尾張。


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信長もまた、海図を見ていた。


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「船がいるな」


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ぽつりと呟く。


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家臣が、少し驚く。


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「海まで?」


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信長は、笑った。


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「全部使う」


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即答。


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陸。


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川。


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海。


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全部が、“流れ”。


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信長は。


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戦国そのものを、動かそうとしていた。


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(次話へ)


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