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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第69話「越後の鍛冶」

鉄を叩く音が、響く。


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越後。


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小さな鍛冶場。


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「最近、多いな」


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鍛冶職人が、汗を拭う。


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槍。


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鍬。


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釘。


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そして。


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鉄筒部品。


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「兼継様が増やしてるらしい」


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若い弟子が、火輪銃部品を見つめる。


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まだ少ない。


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尾張ほどではない。


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だが。


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確実に増えている。


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「戦になるんですかね」


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弟子が、小さく呟く。


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老鍛冶は、少しだけ笑った。


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「戦国だからな」


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即答。


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「でも最近の越後は、戦だけじゃねえ」


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道。


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橋。


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倉。


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仕事が増えていた。


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その頃。


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兼継は、鍛冶場を見ていた。


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火。


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鉄。


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音。


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「……足りんな」


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ぽつりと呟く。


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火輪銃。


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強い。


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だが。


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まだ数がない。


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無理に増やせば。


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国が歪む。


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だから。


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急がない。


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最近の兼継は。


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そう考えるようになっていた。


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「職人保護を増やせ」


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家臣が、少し驚く。


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「戦用ですか」


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兼継は、少しだけ考える。


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そして。


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静かに答えた。


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「国用だ」


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その言葉に。


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老臣たちが、少しだけ目を細めた。


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魔王は。


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少しずつ。


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“越後そのもの”を作り始めていた。


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(次話へ)


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