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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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68/288

第68話「遠い九州」

九州。


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遠い国。


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越後から見れば。


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別世界だった。


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「島津がまた戦してるらしい」


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旅人が、酒場で笑う。


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「九州はいつも戦だな」


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「遠すぎて分からん」


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周囲が、少し笑った。


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今の越後にとって。


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九州は遠い。


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だが。


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戦国は、繋がっている。


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その頃。


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越後。


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兼継は、日本地図を見ていた。


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広い。


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本当に。


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広い。


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西。


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南。


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海。


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島。


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まだ見ぬ戦国が、無数にある。


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「……終わらんな」


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ぽつりと呟く。


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だが。


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嫌ではない。


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その時。


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老臣が、静かに笑った。


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「だからこそ、天下は価値があるのでしょう」


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兼継は、少しだけ沈黙する。


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天下。


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まだ遠い。


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武田も。


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織田も。


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北条も。


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まだ生きている。


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だから。


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今は、急がない。


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戦国は。


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まだ。


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広かった。


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(次話へ)


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