第66話「城下」
越後の城下町。
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朝。
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市場は、騒がしかった。
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魚。
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米。
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布。
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鍬。
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全部が、並んでいる。
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「最近、人増えたな」
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商人が、笑う。
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「道良くなったからな」
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「あと山賊減った」
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周囲が、頷く。
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戦国。
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だが。
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越後は、少しずつ変わっていた。
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「兼継様って怖いけどな」
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若い女が、小さく笑う。
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「前より住みやすい」
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それが。
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最近の越後だった。
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その頃。
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兼継は、城下を見ていた。
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人。
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荷車。
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子供。
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戦場とは違う。
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「……妙だな」
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ぽつりと呟く。
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以前なら。
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興味も持たなかった。
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だが。
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最近は違う。
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“生きている国”。
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それを。
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少しだけ理解し始めていた。
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その時。
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小さな子供が転ぶ。
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荷が落ちる。
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周囲が、慌てる。
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兼継は、少しだけ足を止めた。
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そして。
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落ちた荷を拾う。
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周囲が、静まる。
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「……気をつけろ」
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短い言葉。
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だが。
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母親は、震えながら頭を下げた。
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「ありがとうございます……!」
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兼継は、何も言わず去っていく。
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その背を。
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城下の人々は、静かに見ていた。
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魔王。
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だが。
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最近。
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少しだけ変わった。
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そんな噂が。
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越後では広がり始めていた。
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