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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第65話「朝倉の冬」

越前。


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雪。


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静かな国だった。


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「上杉」


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男が、静かに名を口にする。


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朝倉義景


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朝倉当主。


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その目は、少し疲れていた。


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「武田」


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次。


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「織田」


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最後。


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「……騒がしい時代だ」


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ぽつりと呟く。


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越前は、豊か。


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文化。


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商い。


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学問。


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だが。


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最近。


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外が騒がしすぎる。


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「織田が美濃を安定させたとか」


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家臣が、嫌そうに言う。


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義景は、少しだけ目を閉じた。


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「早いな」


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普通なら。


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侵攻後は荒れる。


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だが。


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織田は違う。


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「……嫌な男だ」


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ぽつりと呟く。


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その頃。


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越後。


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兼継は、越前地図を見ていた。


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朝倉。


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文化。


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金。


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山。


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簡単には崩れない。


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「今は触るな」


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即答。


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家臣が、少し驚く。


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「よろしいので?」


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兼継は、静かに頷く。


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「急ぎすぎると、国が割れる」


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戦国は長い。


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だから。


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今は、“増やしすぎない”。


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その感覚が。


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ようやく身につき始めていた。


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(次話へ)


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