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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第64話「名も無き武将」

越後の小戦場。


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雨。


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泥。


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小競り合い。


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大名の名も出ない。


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歴史にも残らない。


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だが。


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そこでも、人は死ぬ。


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「前へ出ろ!!」


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若い武将が、叫ぶ。


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まだ名もない。


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小豪族の次男。


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だが。


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必死だった。


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家を残すため。


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領地を守るため。


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それだけで、戦っている。


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その様子を。


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兼継は、高所から見ていた。


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「……名も無き戦か」


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ぽつりと呟く。


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戦国。


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有名武将だけじゃない。


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無数の。


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誰にも知られない戦がある。


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その時。


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若い武将が、敵槍を受ける。


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血。


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倒れる。


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だが。


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立った。


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「まだだ!!」


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咆哮。


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兵たちが、再び前へ出る。


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兼継は、静かにそれを見ていた。


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武田信玄。


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織田信長。


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北条氏康。


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怪物だけじゃない。


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こういう者たちが。


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戦国を作っている。


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「……広いな」


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また。


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同じ言葉が漏れる。


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戦国は。


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本当に。


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終わりが見えないほど広かった。


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(次話へ)


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