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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第62話「火輪銃の噂」

「火を吐く鉄筒らしい」


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旅人が、酒を飲みながら呟く。


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「しかも、指揮官だけ死ぬとか」


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周囲が、顔をしかめる。


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「そんな戦、あるかよ」


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笑う者。


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だが。


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笑えない者もいた。


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「武田軍が実際にやられてる」


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空気が、少しだけ変わる。


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火輪銃。


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まだ。


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全国には広がっていない。


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だが。


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噂は広がり始めていた。


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“上杉の鉄”。


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恐怖。


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理解不能。


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その頃。


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越後。


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兼継は、火輪銃を見ていた。


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鉄。


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火薬。


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部品。


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「量産は」


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「まだ難しいかと」


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兼継は、静かに頷く。


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焦らない。


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信長なら。


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もっと急ぐ。


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だが。


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今はまだ。


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越後の地盤を固める方が先。


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「……ゆっくりでいい」


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家臣たちが、少し驚く。


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以前の兼継なら。


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もっと前へ出ていた。


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だが。


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最近は違う。


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戦国は長い。


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その感覚が。


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ようやく根付き始めていた。


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(次話へ)


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