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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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56/288

第56話「まだ遠い天下」

京。


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まだ遠い。


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兼継は、静かにそう思っていた。


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将軍。


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朝廷。


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寺。


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公家。


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全部。


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まだ遠い。


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「今は、越後です」


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老臣が、静かに言う。


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兼継は、頷いた。


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以前なら。


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もっと先を見ていた。


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だが。


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今は違う。


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村。


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道。


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兵。


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補給。


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全部が足りない。


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天下統一。


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そんな簡単な話ではない。


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「……広いな」


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ぽつりと呟く。


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戦国。


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本当に広い。


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その頃。


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甲斐。


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信玄は、笑っていた。


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「まだ越後落ちねえな!!」


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兵たちが、笑う。


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何度戦っても。


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終わらない。


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だが。


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だからこそ。


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楽しい。


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遠く。


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尾張。


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信長もまた、笑っていた。


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「まだ全然足りねえ」


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鉄。


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兵。


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金。


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天下なんて。


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まだ遠い。


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だが。


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それでいい。


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怪物たちは。


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ようやく。


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“戦国の広さ”を理解し始めていた。


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(次話へ)


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