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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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55/288

第55話「尾張の商人」

尾張。


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騒がしい国だった。


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人。


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金。


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荷車。


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全部が動く。


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「急げ!!」


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商人たちが、叫ぶ。


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雨でも止まらない。


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鉄。


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火薬。


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布。


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塩。


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全部が、尾張へ集まる。


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「信長様がまた増やすらしいぞ」


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商人が、笑う。


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「火縄銃か?」


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「らしいな」


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だが。


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別の男が、小さく呟く。


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「……怖えよ」


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沈黙。


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「尾張、変わりすぎだ」


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本当だった。


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最近の尾張は、異常。


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戦国なのに。


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“流れ”がある。


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人も。


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金も。


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物も。


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全部が、集まる。


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その中心。


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織田信長。


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信長は、静かに地図を見ていた。


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「近江は」


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家臣が、すぐ答える。


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「六角、未だ健在」


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信長は、少しだけ笑う。


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「簡単じゃねえな」


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楽しそうだった。


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有名武将。


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強国。


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まだ山ほどいる。


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だから。


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面白い。


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「急ぐな」


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ぽつりと呟く。


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「戦国は長え」


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珍しく。


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静かな声だった。


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その頃。


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越後。


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兼継もまた、地図を見ていた。


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広い。


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戦国は、まだ広い。


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だから。


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焦る必要はない。


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その感覚が。


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少しずつ、生まれ始めていた。


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(次話へ)


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