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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第54話「足軽」

「腰がいてぇ……」


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足軽の男が、泥の上へ座り込む。


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越後。


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雨。


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工事。


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最近。


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戦より。


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道作りばかりだった。


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「お前、戦したくて来たんじゃねえのか」


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別の足軽が、笑う。


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「したいよ」


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男が、空を見る。


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「でも道ねえと飯来ねえしな」


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周囲が、少し笑った。


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戦国。


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結局。


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飯。


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道。


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水。


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そこが死ぬと、全部死ぬ。


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「兼継様、変わったよな」


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ぽつりと呟く。


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以前は。


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もっと怖かった。


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戦。


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火輪銃。


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処刑。


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完全に、魔王。


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だが。


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最近は違う。


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「村も見るようになった」


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「戦の後、米も配ったしな」


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「……変な人だ」


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だが。


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嫌いではない。


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その頃。


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兼継は、一人で地図を見ていた。


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補給。


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雨量。


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村。


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兵数。


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全部が繋がっている。


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「……面倒だな」


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ぽつりと呟く。


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戦だけの方が、簡単だった。


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壊せばいい。


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殺せばいい。


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だが。


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国は違う。


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守らねば、崩れる。


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その時。


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老臣が、静かに入ってくる。


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「兼継様」


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「村より礼状が」


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兼継の目が、少しだけ動く。


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紙。


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汚い字。


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『道ができて助かりました』


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短い。


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だが。


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兼継は、少しだけ沈黙した。


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理解できない感覚。


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武田信玄。


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織田信長。


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そして。


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民。


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戦国は。


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思ったより、広かった。


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