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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第45話「川中島」

川中島。


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戦国最大の死地。


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霧。


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湿った風。


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静かな水音。


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だが。


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その空気の奥。


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殺気だけが、生きていた。


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「来るぞ」


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武田信玄が、笑う。


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目の前。


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霧の奥。


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見えない。


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だが。


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いる。


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上杉兼継。


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信玄の目が、熱を帯びる。


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「最高だな」


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槍を、肩に担ぐ。


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「戦国ってやつは」


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その時。


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霧の中。


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鐘の音。


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一度。


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二度。


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三度。


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武田軍の空気が、変わる。


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「上杉だ!!」


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火輪銃。


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轟音。


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前列が、吹き飛ぶ。


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だが。


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武田軍は、止まらない。


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「押し返せェェ!!」


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騎馬隊が、突撃する。


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霧を裂く。


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その瞬間。


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何もいない。


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「……っ?」


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空。


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偽陣。


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次の瞬間。


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左右。


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高所。


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後方。


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全部から。


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火輪銃。


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轟音。


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地獄。


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武田兵が、次々倒れる。


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だが。


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信玄は、笑っていた。


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「そこだァ!!」


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槍を振る。


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騎馬隊が、霧の奥へ突撃する。


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そして。


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ついに。


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見える。


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白。


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静かな影。


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上杉兼継。


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二人の目が、合う。


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その瞬間。


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空気が、止まった。


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「来たか」


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兼継が、静かに言う。


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信玄は、笑った。


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「待たせたな」


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次の瞬間。


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激突。


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轟音。


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霧が、吹き飛ぶ。


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周囲の兵が、後退する。


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近づけない。


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死ぬ。


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川中島。


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そこはもう。


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怪物の戦場だった。


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(次話へ)


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