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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第329話 交差する平穏

京の朝は、何も変わらずに始まっている。


市場の門が開き、商人が声を上げ、通りに人の流れが戻る。


戦の気配はどこにもない。


だが、それは消えたのではない。


形を変えて沈んでいるだけだ。


上杉の記録隊は街道の端で状況を確認している。


織田の兵も武田の兵も同じ空気の中にいる。


かつて敵と呼ばれた存在は、今はただの構造要素として並んでいる。


誰も刃を抜かない。


必要がないからだ。


兼継はその光景を遠くから見る。


これは平和ではない。


だが戦でもない。


その中間の状態が、長い時間をかけて固定されている。


均衡はまだ維持されているのか。


誰かが呟く。


兼継は答えない。


維持しているのではない。


崩壊の理由が消えているだけだ。

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