↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
295/322

第295話「木枯らしの橋」

十月、越後の橋市。

弥助老人、六十五歳は、小屋の炉に新しい薪をくべ、火を熾していた。


川から吹き付ける風は冷たく、木枯らしが橋の上を吹き抜けていく。

しかし、この寒さの中でも、人と荷の流れが衰えることはなかった。

記録係の若者たちは、かじかむ指に筆を握り、渡る者たちの荷の量を淡々と木札に刻み続けている。

「駿河で武田の動きが激しいらしい」

「尾張の鉄砲がまた増えたそうだ」


民が何気なく口にする他国の噂や、持ち込まれる物資の偏りが、この橋の上ですべて吸い上げられていく。

国家は領土ではない、情報支配の強度である。

兼継の構築した構造は、権力の強制ではなく、民の日常の営みを利用して情報を集積していた。


「弥助さん、これを」

記録係の若者が、新しく届いた防寒用の着物を差し出した。


弥助はそれを受け取り、城の方角を見た。

「殿は、こんな末端の老人の寒さまで数字で見ているのかね」

若者は笑って、再び木札に向き直った。


些細な現場の機能が、そのまま上の者の判断を正確にさせていく。

剣で世界は壊れない。壊れるのは、信頼の連鎖が途切れた時である。

情報の橋は、冬を前にした越後の安寧を、今日も静かに支え続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。