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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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266/288

第266話「信長の遠征準備」

尾張国、小牧山城。

織田信長、二十六歳は、新築された強固な石垣の上に立っていた。


楽市によって急速に膨れ上がる富は、津島の港を介して膨大な軍需物資に変えられていた。

信長が目指すのは、旧来の秩序の徹底的な破壊と再編である。

そのためには、常に周囲を圧倒する軍事圧力を生成し続けねばならなかった。


「濃尾の兵糧の備え、予定の八割を超えました」

丹羽長秀、二十五歳が、背後から報告の声を上げた。


信長は振り返らずに、ぎらつく太陽を見据えた。

「完成を急ぐな。蓄えたものは使わねば腐る。圧力を一点に集中させよ」


信長の狙いは、内の不満を外への拡張によって相殺する循環構造であった。

立ち止まることは、すなわち織田という巨大な破壊装置の停止を意味する。


「北の若造は、まだ数字を数えているか」

信長は短く笑った。


戦を避けて内を固める越後の持続力を、信長は退屈だと切り捨てつつも、その底知れぬ気配を無視できずにいた。

破壊の嵐がどこへ向かうか。

信長が放つ強烈な軍事圧力は、周囲の均衡を激しく揺さぶり始めていた。

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