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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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244/288

第244話「武田の視線」

甲斐国、躑躅ヶ崎館。

武田信玄、三十九歳は、冷たい水を一気に飲み干した。


内の経済循環が貧弱な甲斐は、常に外への軍事圧力を必要としている。

春の行動の予兆は、すでに重臣たちの間で共有されていた。


「越後の国境、相変わらず隙がございませぬ」

山本勘助、三十九歳が、静かに地図を指し示した。


兵数は少ない。

しかし、物資の配給経路が完璧に整備されており、どこを叩いても即座に防備が跳ね上がる構造になっていた。


「やはり、北は泥沼だな」

信玄は呟いた。


「崩すには、こちらの経済持続力が足りぬ」

局地戦において無敵を誇る武田の騎馬隊も、長期の維持を前提とした構造体には通用しにくい。

信玄は敵を殺しすぎることを嫌う。

それは、統治の持続力を奪うからであった。


「南へ回る」

信玄は決断した。


「今川の維持力が落ちている。駿河の海を手に入れねば、甲斐は干上がる」


武田の軍事圧力は、越後を避けて南へと旋回を始めた。

これもまた、兼継が作り出した「崩れない強さ」が、周囲の構造を再配置させた結果であった。

信玄の鋭い瞳は、すでに甲斐の山々の向こう、青い海を捉えていた。

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