表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
237/288

第237話「叱責の残響」

かつて兼継に静かに叱責された橋の管理担当者は、春の補修現場に立っていた。

彼の目つきは半年前とは完全に変わっていた。大工たちが柱の根元を調べている横で、自ら泥にまみれて基礎の石組みを覗き込んでいた。

「小さな傷も見落とすな」

大工たちに鋭い声をかけるその姿には、かつての怠慢は一切なかった。


兼継に怒鳴られたわけではない。

「判断の権限はお前にはない」

と言われただけの言葉が、今も彼の耳の奥で冷たく響いていた。事実を事実のまま上に上げることが、己の唯一の存在意義であると、彼は骨身にしみて理解していた。現場から上がってきた報告書は、誇張も隠蔽もない純粋な数字となって兼継の元へ届く。


兼継はそれを見て、即座に次の予算と人員の配置を決める。家臣の感情を処理させるのではなく、役割の精度を限界まで高める。これが上杉の統治核が持つ、静かな強制力であった。


城内の廊下で、他の家臣が彼に声をかけた。

「近頃、ずいぶんと細かくなったな」

彼は足を止めずに答えた。

「殿は我らの顔を見ておられない。我らが上げる数字を見ておられる。数字が嘘をついた時、我らの場所はなくなるのだ」


その緊張感は、恐怖によるものではなかった。構造の歯車として正確に噛み合っているという、奇妙な充実感が城内を支配し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ