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第226話「記録係の誕生」
兼継が夜通し書いた設計図が、形になり始めたのはこの頃だった。
城に記録専任の者が一人置かれた。二十六歳、もとは書記だった男が、玄斎に半年師事した後、兼継直属になった。
仕事の内容は単純だった。市の取引量を数える。橋を渡る人と荷の数を記録する。城下の職人の数を書き留める。それだけだ。
最初、他の家臣には意味がわからなかった。戦の準備でも外交でもない。ただ、数を記録するだけ。
一ヶ月後、兼継はその記録を見て橋市の蔵の場所を変えた。数字を見れば、人の流れがわかった。
二ヶ月後、記録をもとに薪の配給量を修正した。
三ヶ月後、家臣たちが自分から記録係に資料を持ち込むようになっていた。
数字が政を動かす。
それを理解するのに三ヶ月かかった。理解した者は誰も声に出さなかったが、みな同じことを思っていた。三ヶ月前の自分に、早く気づけと言いたかった。




