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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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第227話「毛利の船、再び」

越後の湊に毛利の船が来たのは、雪が積もり始めた直後だった。


前回より船が大きかった。荷も増えていた。それより、人が変わっていた。荷運び中心だった前回と違い、今回は交渉のできる商人が乗っていた。


越後の鉄と、毛利の塩と魚。量と値段と輸送条件を、二日かけて詰めた。


最後に毛利の商人が言った。「越後は商いがしやすい」


越後側が聞いた。「どういう意味ですか」


「約束が守られる。前回の話が、そのまま今回に引き継がれていた。担当が変わっても、経緯が伝わっていた」


それは記録の話だった。前回の交渉が書き留められていて、担当者が変わっても内容が消えなかった。


記録が信頼を作った。意図した結果ではなかった。ただ、記録したことで、そうなった。


毛利の商人は帰り際、湊を見回した。「来年また来ます」


越後の担当者は頭を下げた。記録係の存在を、初めて心から良かったと思った。

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