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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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224/288

第224話「初めて叱る」

珍しいことが起きた。


兼継が家臣を叱った。


橋の管理を担当する者、三十八歳。先週の点検報告に誤りがあった。桁の一か所に傷みがあったが、「異常なし」と書いてあった。大工が直接兼継に言いに来た。橋は危なくない、でも担当者が見落としていた、と。


兼継は担当を呼んだ。


叱り方は静かだった。怒鳴らなかった。


「なぜ異常なしと書きましたか」


「小さな傷だったので、問題ないと判断しました」


「その判断をする権限は、あなたにはありません。見たものを書くのがあなたの役目です。判断は私がします」


短かった。それだけだった。


担当は頭を下げた。廊下を出てから、妙な気持ちになった。怒鳴られた方が、感情を処理できた。


兼継はその後、大工を呼んで礼を言った。「直接来てくれてよかった」


「問題を問題のまま上げてくる者が、一番大事です」

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