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第224話「初めて叱る」
珍しいことが起きた。
兼継が家臣を叱った。
橋の管理を担当する者、三十八歳。先週の点検報告に誤りがあった。桁の一か所に傷みがあったが、「異常なし」と書いてあった。大工が直接兼継に言いに来た。橋は危なくない、でも担当者が見落としていた、と。
兼継は担当を呼んだ。
叱り方は静かだった。怒鳴らなかった。
「なぜ異常なしと書きましたか」
「小さな傷だったので、問題ないと判断しました」
「その判断をする権限は、あなたにはありません。見たものを書くのがあなたの役目です。判断は私がします」
短かった。それだけだった。
担当は頭を下げた。廊下を出てから、妙な気持ちになった。怒鳴られた方が、感情を処理できた。
兼継はその後、大工を呼んで礼を言った。「直接来てくれてよかった」
「問題を問題のまま上げてくる者が、一番大事です」




