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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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223/288

第223話「信玄、息子に語る」

甲斐。


武田信玄が息子に語ったのは、夕食のあとの静かな時間だった。


「越後に面白い子どもがいる」


息子、十四歳。


「どう面白いのですか」


「戦をしていない。なのに強くなっている」


息子は首をひねった。強い、とは戦で強いことだと思っていた。


「強さには二種類ある。叩いて相手を崩す強さと、積み上げて崩れない強さだ。前者は早い。後者は遅い。だが後者の方が、最終的には大きくなる。何より、止めにくい」


「越後は後者ですか」


「今は積んでいる最中だ。まだ小さい。だが十年後、二十年後を考えてみろ」


息子は考えた。


「どうなりますか」


信玄はすぐに答えなかった。外で風が鳴っていた。


「わからない」と信玄は言った。「だから面白い。俺が生きている間に、その答えが出るかどうか」


息子は父の横顔を見た。武将の顔ではなかった。何かを楽しんでいる、子どものような顔だった。

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