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第223話「信玄、息子に語る」
甲斐。
武田信玄が息子に語ったのは、夕食のあとの静かな時間だった。
「越後に面白い子どもがいる」
息子、十四歳。
「どう面白いのですか」
「戦をしていない。なのに強くなっている」
息子は首をひねった。強い、とは戦で強いことだと思っていた。
「強さには二種類ある。叩いて相手を崩す強さと、積み上げて崩れない強さだ。前者は早い。後者は遅い。だが後者の方が、最終的には大きくなる。何より、止めにくい」
「越後は後者ですか」
「今は積んでいる最中だ。まだ小さい。だが十年後、二十年後を考えてみろ」
息子は考えた。
「どうなりますか」
信玄はすぐに答えなかった。外で風が鳴っていた。
「わからない」と信玄は言った。「だから面白い。俺が生きている間に、その答えが出るかどうか」
息子は父の横顔を見た。武将の顔ではなかった。何かを楽しんでいる、子どものような顔だった。




