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第220話「氏康、冬に思う」
小田原の冬は、越後ほど厳しくない。
北条氏康は炉の前に座って、書状の束を読んでいた。越後からの報告が、その中にあった。
冬支度の指示。市の移転、橋の管理強化、薪の配給経路の確認。細かい話だった。
だが氏康は、その細かさに止まった。
大きな戦略を語る者は多い。天下を語る者はもっと多い。だがこういう、市の屋根と橋の点検と薪の道を、冬が来る前に同時に考えられる者は少ない。
上の者が現場の細部を把握しているということは、現場が機能しているということだ。機能している現場は、崩しにくい。外から叩いても、内側が動き続ける。
氏康は書状を置いた。
「あの子どもは、どういう者に育てられたのだ」
問いは独り言だった。答えはなかった。
炉の火が静かに燃えていた。越後の方角には、雪が積もっているだろう。それでも橋は残り、市の一部は動き、薪は届いていく。
氏康はそれを、少し羨ましいと思った。




