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第218話「楽市、尾張に生まれる」
その頃、尾張に動きがあった。
信長が城下に触れを出した。市場の税を下げる。座の特権を廃する。誰でも、どこからでも、自由に商いができる。
家臣たちは戸惑った。税を減らせば収入が減る。旧来の商人が反発する。
信長は聞かなかった。
「市が動けば人が集まる。人が集まれば税の総量が増える。一人から多く取るより、多くの者から少しずつ取る方が、長く続く」
家臣の一人が越後の話を持ち出した。橋市も参加を自由にしているらしい、と。
信長は少し間を置いた。
「越後は下から育てた。俺のは上から開く。どちらが早いか、見ていろ」
尾張の楽市は、こうして始まった。
越後が「自然に育てた市」なら、尾張は「強制的に開いた市」だった。どちらが長く続くか、この時点では誰にもわからなかった。ただ、同時に、二つの国が市の形を変えていた。




