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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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218/288

第218話「楽市、尾張に生まれる」

その頃、尾張に動きがあった。


信長が城下に触れを出した。市場の税を下げる。座の特権を廃する。誰でも、どこからでも、自由に商いができる。


家臣たちは戸惑った。税を減らせば収入が減る。旧来の商人が反発する。


信長は聞かなかった。


「市が動けば人が集まる。人が集まれば税の総量が増える。一人から多く取るより、多くの者から少しずつ取る方が、長く続く」


家臣の一人が越後の話を持ち出した。橋市も参加を自由にしているらしい、と。


信長は少し間を置いた。


「越後は下から育てた。俺のは上から開く。どちらが早いか、見ていろ」


尾張の楽市は、こうして始まった。


越後が「自然に育てた市」なら、尾張は「強制的に開いた市」だった。どちらが長く続くか、この時点では誰にもわからなかった。ただ、同時に、二つの国が市の形を変えていた。

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