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第217話「教え方を学ぶ者」
玄斎の小屋に若い男が訪ねてきたのは、木枯らしが吹き始めた日の午後だった。
源太郎、二十二歳。荷運びから帳付けに転じた男で、文字を覚えたことで仕事が変わった。日当が上がり、着物が一枚増えた。だがそれより大きかったのは、人の目だった。読み書きができると知ると、周囲の態度が変わった。少し怖いような、嬉しいような気持ちだったと、後に語っている。
玄斎を訪ねた理由を、源太郎は正直に言った。
「仲間に教えたい。でも俺の説明じゃ伝わらない。何が足りないのかもわからないんです」
玄斎は茶を一口飲んでから言った。「伝わらないとわかることが、すでに才能です。多くの者は、伝わっていないことにすら気づかない」
その日から、週に一度、玄斎は源太郎に教え方を教えた。知識を渡す技術は、知識そのものより難しい。玄斎が京で三十年かけて学んだことの核心だった。
越後の識字教育は、こうして二層目に入った。誰も命じなかった。ただ、そういう者が現れた。




