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第214話「毛利の船」
瀬戸内。
毛利の船が、越後の湊に入ったのはこの頃だった。
表向きは交易だった。実際に交易もした。だが船頭の一人、三十八歳は、湊の様子をよく見ていた。
船の数が増えていた。
以前来た時より、明らかに多い。しかも、荷の種類が変わっていた。以前は米と塩が中心だった。今は木材、鉄、布、薬草、さまざまな荷が入り乱れている。
経済が広がっている、と船頭は思った。
湊の者に酒を奢り、話を聞いた。
「最近、橋ができましてね」と男は言った。「あれから内陸との行き来が増えて、湊まで物が降りてくるようになった」
橋。
船頭は越後の内陸に橋があることは知らなかった。
「殿がお作りになったんですか」
「ええ、まだお若いんですがね」
船頭は毛利への報告書に書き足した。
越後、経済拡大中。陸路と水路が繋がりつつある。
小さな一行だった。
だが毛利の首脳が、それを読む日が来る。
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