表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/28

第21話「甲斐の虎」

吹雪の中。


---


二つの軍が、睨み合っていた。


---


上杉。


---


武田。


---


そして。


---


その中心。


---


上杉兼継。


---


武田信玄。


---


誰も、動けない。


---


動けば。


---


死ぬ。


---


それほどまでに、空気が張り詰めていた。


---


「……退かぬか」


---


兼継が、静かに言う。


---


感情はない。


---


確認。


---


ただ、それだけ。


---


信玄は、笑った。


---


「退けば、終わる」


---


血を流しながら。


---


肩を砕かれながら。


---


それでも。


---


立っている。


---


---


「……そうか」


---


兼継は、短く返す。


---


---


理解していた。


---


武田信玄は。


---


“折れない”。


---


---


だからこそ。


---


殺す価値がある。


---


---


雪。


---


風。


---


沈黙。


---


その中で。


---


信玄が、槍を構える。


---


---


「来い」


---


---


短い言葉。


---


---


次の瞬間。


---


地面が、爆ぜた。


---


---


踏み込み。


---


速い。


---


傷を負った動きではない。


---


---


武田兵ですら、目を見開く。


---


---


「信玄様……!」


---


---


兼継は、避けない。


---


---


踏み込む。


---


---


正面。


---


---


槍と短刀。


---


激突。


---


---


轟音。


---


雪が、吹き飛ぶ。


---


---


重い。


---


---


信玄の一撃は、山のようだった。


---


---


普通なら。


---


受けた瞬間、終わる。


---


---


だが。


---


兼継は、止まらない。


---


---


「……っ」


---


---


信玄の目が、初めて揺れる。


---


---


軽い。


---


だが。


---


重い。


---


---


矛盾。


---


---


兼継の動きには、“迷い”が存在しない。


---


---


最短。


---


最速。


---


最効率。


---


---


“勝つ動きだけ”。


---


---


「……なるほど」


---


---


信玄が、笑う。


---


---


「だから魔王か」


---


---


兼継は、答えない。


---


---


次の瞬間。


---


短刀が、消える。


---


---


「っ!?」


---


---


速い。


---


見えない。


---


---


信玄が、咄嗟に身体を捻る。


---


---


血。


---


---


頬が、裂ける。


---


---


武田兵たちが、凍りつく。


---


---


傷をつけた。


---


---


武田信玄に。


---


---


それだけで。


---


戦場の空気が、変わる。


---


---


信玄は、血を拭う。


---


---


そして。


---


笑った。


---


---


「面白い」


---


---


本気だった。


---


---


その瞬間。


---


武田軍が、再び前へ出る。


---


---


「信玄様に続けぇぇ!!」


---


---


咆哮。


---


---


崩れていた軍が、蘇る。


---


---


兼継は、それを見る。


---


---


「……軍そのものか」


---


---


理解した。


---


---


武田信玄は。


---


武田軍そのもの。


---


---


存在が、軍を動かしている。


---


---


「ならば」


---


---


兼継の目が、細くなる。


---


---


「やはり、殺すしかない」


---


---


火輪銃隊が、再び構える。


---


---


だが。


---


信玄は、もう見ている。


---


---


位置。


---


角度。


---


風。


---


雪。


---


---


「右だ」


---


---


叫ぶ。


---


---


次の瞬間。


---


右側の雪原へ、騎馬隊が突撃する。


---


---


「なっ……!?」


---


---


上杉兵が、動揺する。


---


---


見抜いた。


---


---


火輪銃隊の一部配置を。


---


---


「……ほう」


---


---


兼継が、初めて驚いた。


---


---


武田信玄。


---


学習している。


---


---


しかも。


---


戦場で。


---


即座に。


---


---


騎馬隊が、火輪銃隊へ迫る。


---


---


距離が、消える。


---


---


「散れ」


---


---


兼継の命令。


---


---


火輪銃隊が、即座に後退する。


---


---


乱れない。


---


---


だが。


---


信玄は、笑っていた。


---


---


「届く」


---


---


その一言。


---


---


武田軍が、さらに前へ出る。


---


---


初めて。


---


兼継の“安全圏”へ。


---


武田が、牙を届かせ始めていた。


---


---


雪の中。


---


魔王と虎が、真正面から噛み合う。


---


---


戦国最悪の戦。


---


まだ、終わらない。


---


(次話へ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ