表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/24

第20話「魔王降臨」

雪は、止んでいなかった。


---


吹雪。


---


白。


---


血だけが、色を持っている。


---


その戦場に。


---


静かに、一人の影が降りた。


---


---


上杉兼継。


---


---


誰も、声を出せない。


---


---


武田軍。


---


上杉軍。


---


敵も味方も。


---


全員が、目を奪われていた。


---


---


小さい。


---


まだ十一歳。


---


だが。


---


その存在感だけが、異常だった。


---


---


「……来るか」


---


---


武田信玄が、血を流しながら笑う。


---


---


肩は、崩れている。


---


普通なら、立てない。


---


だが。


---


立っている。


---


---


兼継は、何も答えない。


---


---


ただ。


---


雪の中を歩く。


---


---


足音すら、静かだった。


---


---


その瞬間。


---


武田兵たちが、本能で下がる。


---


---


「っ……」


---


---


恐怖。


---


---


理由は分からない。


---


だが。


---


近づいてはいけない。


---


---


本能が、理解していた。


---


---


信玄だけが、動かない。


---


---


「……なるほど」


---


---


兼継が、初めて口を開く。


---


---


「お前が、武田を立たせている」


---


---


短い言葉。


---


---


信玄は、笑う。


---


---


「そういうお前は」


---


---


槍を構える。


---


---


「上杉そのものだ」


---


---


吹雪。


---


沈黙。


---


---


次の瞬間。


---


信玄が、踏み込んだ。


---


---


速い。


---


重い。


---


普通の人間ではない。


---


---


だが。


---


兼継は、動かない。


---


---


「……っ!」


---


---


武田兵が、息を呑む。


---


---


避けない?


---


---


違う。


---


---


“見切っている”。


---


---


槍が届く寸前。


---


ほんの僅か。


---


体がズレる。


---


---


空振り。


---


---


信玄の目が、細くなる。


---


---


「見えているか」


---


---


兼継は、答えない。


---


---


次の瞬間。


---


踏み込む。


---


---


速い。


---


十一歳の動きではない。


---


---


短刀。


---


雪を裂く。


---


---


信玄が、防ぐ。


---


火花。


---


衝撃。


---


---


だが。


---


重い。


---


---


「……っ!」


---


---


武田信玄が、初めて押された。


---


---


周囲が、凍る。


---


---


あり得ない。


---


---


武田信玄が。


---


力で押されている。


---


---


兼継は、止まらない。


---


---


次。


---


また次。


---


---


無駄がない。


---


迷いがない。


---


---


まるで。


---


“勝つ動きだけ”を選んでいる。


---


---


「……軍神か」


---


---


信玄が、笑う。


---


---


だが。


---


兼継は、否定した。


---


---


「違う」


---


---


短い声。


---


---


「もっと悪い」


---


---


その瞬間。


---


空気が、変わる。


---


---


兼継の目。


---


それを見た武田兵が、震える。


---


---


人ではない。


---


---


そこにあるのは。


---


感情ではなく。


---


“処理”。


---


---


敵を。


---


戦場を。


---


人間を。


---


すべて、合理で見ている。


---


---


「……魔王」


---


---


誰かが、呟く。


---


---


その言葉が。


---


初めて。


---


戦場で、現実になる。


---


---


信玄が、笑った。


---


---


「なるほど」


---


---


槍を、握り直す。


---


---


「確かに、お前は軍神じゃない」


---


---


吹雪。


---


血。


---


雪。


---


その中心で。


---


二人だけが、立っている。


---


---


「だが」


---


---


信玄の目に、熱が宿る。


---


---


「だからこそ、面白い」


---


---


次の瞬間。


---


再び激突。


---


---


轟音。


---


雪が、吹き飛ぶ。


---


---


周囲の兵が、近づけない。


---


---


別格。


---


---


戦そのものが、変わっている。


---


---


兼継は、静かだった。


---


---


感情が、ない。


---


だが。


---


その奥。


---


ほんの僅か。


---


---


“熱”。


---


---


武田信玄だけが。


---


初めて、それを引き出している。


---


---


「……強いな」


---


---


兼継が、呟く。


---


---


初めての、本音。


---


---


信玄が、笑う。


---


---


「お前もだ」


---


---


その瞬間。


---


吹雪の中。


---


二人だけが、笑った。


---


---


魔王。


---


そして。


---


虎。


---


---


戦国最悪の戦が。


---


ここで、始まる。


---


(次話へ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ