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第19話「軍神殺し」

吹雪。


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白。


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視界は、ほとんど存在しない。


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その中で。


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武田軍は、止まっていた。


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囲まれている。


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理解した瞬間。


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兵たちの顔から、色が消える。


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「……っ」


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誰かが、息を呑む。


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高所。


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灯り。


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そして。


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無数の銃口。


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火輪銃。


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百五十。


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すべてが、こちらを向いている。


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「……見事だ」


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武田信玄は、静かに呟く。


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怒りではない。


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恐怖でもない。


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純粋な、感嘆。


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「雪まで利用するか」


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吹雪。


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地形。


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恐怖。


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視界。


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すべて。


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上杉兼継の戦場。


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「信玄様!」


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側近が叫ぶ。


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「ここは撤退を――」


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「無理だ」


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即答。


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「退路は、もう死んでいる」


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理解していた。


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最初から。


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これは、“ここへ来させる戦”。


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武田軍は。


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辿り着かされた。


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「……だが」


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信玄が、槍を握る。


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「終わるつもりはない」


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その瞬間。


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火輪銃が、火を吹いた。


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轟音。


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吹雪が、裂ける。


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前列が、消える。


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兵が倒れ。


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馬が崩れ。


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血が雪を染める。


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「前へ出ろ!!」


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それでも。


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武田軍は、止まらない。


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普通なら。


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完全に壊れている。


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だが。


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武田信玄がいる。


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それだけで。


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軍が、まだ立つ。


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「……異常だな」


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高所。


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兼継が、静かに呟く。


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「軍が、人で動いている」


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武田軍は。


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信玄そのもの。


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ならば。


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壊す場所は、一つ。


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「狙え」


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火輪銃隊の視線が、一斉に集まる。


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武田信玄。


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空気が、凍る。


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武田兵たちも、気づく。


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「守れぇぇぇ!!」


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叫び。


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兵が、前へ出る。


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信玄を庇うために。


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轟音。


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再び、発砲。


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次々に、兵が倒れる。


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それでも。


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前へ出る。


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「……信玄様を!!」


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血。


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雪。


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叫び。


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吹雪の中で。


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武田軍だけが、燃えている。


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兼継は、それを見ていた。


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「……強い」


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認める。


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敵として。


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軍として。


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ここまで壊しても。


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まだ立つ。


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だが。


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「終わりだ」


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静かな声。


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その瞬間。


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最後列。


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高所。


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そこにいた火輪銃隊が、同時に動く。


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三段目。


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最初から。


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信玄専用。


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「――撃て」


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轟音。


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吹雪を裂き。


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一直線。


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武田兵が、叫ぶ。


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「信玄様ァァァ!!」


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信玄が、動く。


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避ける。


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だが。


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完全ではない。


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血。


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肩。


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肉が、吹き飛ぶ。


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「っ……!」


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初めて。


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武田信玄が、膝をついた。


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空気が、止まる。


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武田軍も。


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上杉軍も。


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全員が。


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固まる。


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信玄が。


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膝をついた。


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それは。


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戦国そのものが揺れるほどの意味を持っていた。


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「……終わりか」


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兼継が、静かに言う。


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だが。


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武田信玄は。


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笑った。


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血を流しながら。


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雪の中で。


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「……まだだ」


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立つ。


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肩を失いながら。


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それでも。


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立つ。


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武田軍が、歓声を上げる。


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「信玄様!!」


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その瞬間。


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兼継の目が、初めて細くなる。


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「……そうか」


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理解した。


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この男は。


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“殺しても終わらない”。


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だから。


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「軍神殺しでは足りないか」


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ぽつりと呟く。


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そして。


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初めて。


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上杉兼継が。


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武器を取った。


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周囲の空気が、凍る。


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家臣たちですら、息を止める。


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魔王が。


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直接、戦場へ降りる。


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それが。


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何を意味するのか。


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誰も、理解できなかった。


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(次話へ)


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