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第209話「甲斐からの返書」
武田からの返書が届いたのは、氏康が書状を出してから十日後だった。
短い文だった。
「越後の件、こちらも注視している。橋と市と学問。順番に意味がある。あの子どもは、何かを設計している」
氏康は二度読んだ。
信玄も同じ見方をしていた。
ただ、最後の一行が引っかかった。
「しかし、設計する者は必ず、設計の外に出られなくなる」
氏康は窓の外を見た。
設計の外に出られなくなる。
どういう意味か。
しばらく考えて、わかった気がした。
自分で作った構造に、自分が縛られる。橋を作れば橋を守らなければならない。市を作れば市を維持しなければならない。学問を広げれば、学んだ者の期待に応えなければならない。
積み上げるほど、守るものが増える。
それは強さか。それとも弱点か。
氏康は返書を折り畳んだ。
越後の子どもが何を設計しているのか、まだわからない。
だが、その設計が完成した時。
戦国の地図は、今とは違う形になっているかもしれない。
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