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第202話「兼継、動かす前に止まる」
報告書が戻ってきた。
玄斎の言葉が、ほぼ一言一句そのまま書き写されていた。家臣の几帳面さに、兼継は少し笑いそうになった。
国が死なない記憶を持つ。
その一文を、兼継は何度も読んだ。
動かしたかった。今すぐ越後中に学問小屋を作り、師を集め、子どもたちに文字を教えたかった。
だが、止まった。
急げば壊れる。それは橋で学んだことだった。最初に作った橋は、三ヶ月で傾いた。材木が足りなかったのではない。土台を固める時間が足りなかった。
学問も同じだろう。
師がいない場所に場所だけ作っても意味がない。場所があっても、親が子を通わせなければ意味がない。親が価値を感じなければ、子は来ない。
順番がある。
兼継は紙を置いた。
設計図はまだ書けない。
まず、玄斎の小屋が何年続くかを見る。続けば、それが根拠になる。
十三歳は、焦らなかった。
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