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第198話「兼継、設計を始める」
報告書の一行が、兼継の頭の中で三日間動き続けていた。
識字教育。城下に自然発生。
自然発生、という言葉が引っかかる。
誰かが命じたわけではない。流れ着いた学者と、集まった子どもたちと、それを認めた親たちが、勝手に作った場所だ。
兼継は地図を広げた。
越後は広い。城下だけではない。山村がある。漁村がある。川沿いの集落がある。
今この瞬間、文字を知らない民がどれだけいるか。
数えようとして、やめた。
数えても意味がない。問題は数ではなく、構造だ。
誰かが教える場所がなければ、知識は伝わらない。伝わらなければ、積み上がらない。積み上がらなければ、越後は永遠に口伝えの国のままだ。
灯の前で、兼継は静かに紙を取った。
書き始める。
まだ命令ではない。
ただの、設計図だった。
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